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カッシーナ・イクスシー青山本店3階のリニューアルした空間に、チェコッティ・コレツィオーニの家具とともに展示。羽根をまとった円形の鏡は「SUNSET MIRROR」という作品。革新的なデザインとクラシカルな遊び心のある色合いが見事に調和している。

真鍮の価値をさらに高めたインテリアアクセサリー

ヨーロッパでは古くから、真鍮は幸福をもたらす金属として好まれ、生活のさまざまな場面で使われてきた。美しさと重厚さ、どことなく懐かしさを醸し出す真鍮の表情は、使い込むほどに年齢を重ね、味わいのある美しい色調に変化する。日常の手入れをきちんとしていれば、60年からが特別に美しくなるといわれ、数世代にわたって愛着をもって使い続けるファミリーも珍しくない。

そんな時代を超えて愛されてきた真鍮に、新たな魅力を吹き込んだのが、今年のミラノ・サローネ期間中にギャラリー、Spazio Rossana Orlandi(スパツィオ・ロザンナ・オルランディ)で発表された「GHIDINI 1961(ギディーニ 1961)」だ。これはイタリアのロンバルディア地方のブレシアで創業した、真鍮、アルミニウム、亜鉛合金のダイキャスト(金型鋳造)を専門にする、Ghidini Bosco(ギディーニ・ボスコ)社がこれまで培ってきた技術と知識を新たなステージに高めることを目的にスタートしたブランドで、Stefano Giovannoni(ステファノ・ジョバンノーニ)がアート・ディレクションを務めている。

ステファノ・ジョバンノーニといえば、フローレンス大学建築学科をはじめ、いくつかの大学などで教授職を歴任後、現在は工業デザイナー、インテリアデザイナー、建築家として活躍しているミラノを拠点にするクリエイターだ。数多くの有名企業の製品デザインを手がけており、そのなかには世界的な大ヒットとなったものも少なくない。彼の作品が、パリのポンピドゥー・センター、ニューヨークのMoMAコレクションで永久収蔵品となっていることからも、その実力をうかがい知ることができるだろう。

「TIP TOP」と名付けられたシリーズのトレイと小物入れ。そのままオブジェとして飾っても美しい。デイリーユースにもおすすめのインテリアアクセサリーだ。

革新的なデザインが目を引く「ギディーニ 1961」だが、それを成立させているのはギディーニ・ボスコ社の良質なクラフトマンシップだ。ギディーニ・ボスコ社ではモールド(鋳型)の製作から鋳造、手仕事の磨き上げまで、すべての工程を自社で行っている。長年、蓄積された知識に基づき、伝統的な職人技と最新のテクノロジーを組み合わせることによって独自に開発した技術が、複雑でアーティスティックな形の「ギディーニ 1961」を可能にしたのだ。

「ギディーニ 1961」の製品を生産するにはモールド鋳造の製作が必要で、それに約1カ月、完全に仕上がるまでには人の手でさらに精錬されていく。いったん、製品の元となるサンプルが完成すれば、ロボットやコンピュータによって数値を制御した工作機械による生産となるが、それでも最終的には人の手で磨き上げられる工程が不可欠だという。まさに、手間暇を惜しんでいてはとうてい到達できないゴールだ。しかし、それゆえ「ギディーニ 1961」のコレクションには、他にはない絶対的な価値がある。

脚付きのシャンパンクーラー「DOUBLE O, OPERA」。「ギディーニ 1961」のクリエイティブチームは製品をデザインするにあたって、まずは真鍮という素材そのものがもつ特性を見極め、その価値を高めることを心がけているという。

いまや“ラグジュアリー”という言葉は、単なる“贅沢”や“豪華”には置き換えられない意味をもっている。素材が高級なのは当然として、本当の意味でラグジュアリーと呼べるのは、そこにどれだけ本質的な価値が詰まっているか……。それは、製品をつくり上げるためにかかった膨大な時間であり、そこにたどり着くまでに歩んできた人間の思いやストーリーもそのひとつであるかもしれない。「ギディーニ 1961」は、日常使いのインテリアアクセサリーをラグジュアリーなアートピースの域にまで押し上げ、さらに真鍮の可能性と未来をも切り拓いた。真鍮がこれからも永続的に愛されるものであるために。

10年後、20年後、30年後、そして60年後、これらのコレクションは“未来のアンティーク”となって、どんな魅力的な表情を見せてくれるのだろう。

南国に生い茂る植物の葉をモチーフにしたボウルは「FLORIDA BOWL」というネーミング。真鍮ならではの色彩はもちろん、温かくビロードのような手触りも心地いい。

Photos: Toru Yuasa
Edit: Toshiaki Ishii


GHIDINI 1961
伝統的な職人技と先進技術を組み合わせ、真鍮、アルミニウム、亜鉛合金のダイキャスト(金型鋳造)を専門とする、ロンバルディア地方のブレシアで創業したGhidini Bosco(ギディーニ・ボスコ)。2016年、ステファノ・ジョバンノーニのアート・ディレクションのもと、新たなブランドを立ち上げ、今年のミラノ・サローネにおいてRossana Orlandiで発表されました。革新的なデザイン、クラシカルで遊び心のある色合い、真鍮の特性が調和した、デイリーユースのインテリアアクセサリーのコレクションです。ゴールドの色調と反射、その温かくビロードのような表面の手触りが心地よい、真鍮という価値ある素材の特性を高めています。日本初上陸です。

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