WEB MAGAZINE2020.10

使うほど、好きになる。
いつもそばに、マラルンガのある暮らし 陶作家・ギャルリ百草廊主
安藤 雅信さん

1973年にデザインされ、今なお世界中で愛されている「マラルンガ」。一度、腰を下ろしたら「その座り心地が忘れられなくなる」と評される名作ソファです。そのデザイナーであるイタリアの巨匠ヴィコ・マジストレッティの生誕100年となる今年、彼の代表作であるこの名作は一層の注目を浴びています。

ニューヨーク近代美術館にも所蔵されているこの美しいソファを愛用しているのが、陶作家の安藤雅信さん。「もっと長く使いたいから」と、この夏(2020年)、11年目にして張替えをしました。安藤さんの暮らしの中で、マラルンガとはどんな在り方をしているのでしょうか。多治見にあるご自宅とギャルリ百草を訪ね、その様子を前後編でお届けします。

- 後編- 使い手によって味わいが出るマラルンガと安藤さんの作品

#1

豊かな自然環境に
しっくりと馴染む

「この庭を椿の山にしたいなと思って、この春に様々な椿をたくさん植えました。コロナ禍の自粛中には、一人でコツコツと石畳も敷きました」
安藤邸のリビングの大きな窓から庭に目を向けると、風に揺られる木々の緑が美しく輝いています。電線などの人工物が一切、見えないという贅沢な自然環境。広々としたウッドデッキのすぐ前には、2本のシンボルツリーがすっくと立ち、まるでこちらの様子をうかがっているかのよう。
「もともと雑木林だった場所なのですが、建築家の中村好文さんにお願いしたところ、この2本の木をメインに家を建てましょう、ということになりました。落葉樹なので、冬にはまた異なる表情を見せてくれます」
リビングの中心に鎮座する黒革マラルンガのサイズは、3人掛け。一見するとボリュームがあるように感じますが、この豊かな自然環境に囲まれた空間の中にすっと収まっています。
「折紙のように色々な線の表情があるから、ここに馴染んでいるのかな。威圧感がないデザインも気に入っています」

#2

使い手によってものが育つ
「後半生」の味わい

自宅のある敷地内には、1998 年に開廊したギャルリ百草(ももぐさ)があります。名古屋市鳴海で取り壊されることになっていた古民家との出会いが、安藤さんのある想いに火をつけました。
「茶道を始めてからしばらく経ち、日本人の美意識を根底から問い直したいと思っていた時期だったので、家を見たとき、生活空間として100 年使われてきたこの数寄屋風建築であれば、茶室での在り方と同じように、ものと対峙することができるのではないかと思いました。そこで、2年かけて移築してギャルリ百草を始めました」
その数年後、安藤さんの作品作りにも大きなターニングポイントが訪れます。食器の代表作であるオランダ皿の誕生です。

「97年に東京・目白の『古道具坂田』で催された『オランダ白釉陶器展』を見て、これだ!と思いました。17世紀のオランダの庶民が使っていた素朴な白い皿です。そこには、この技術を見てくれ、という自己表現はなく、使い手が関われる余白、使いこなしたくなる“間” がありました」
オランダ皿を写した処女作は、恩返しのつもりで古道具坂田の主人、坂田和實さんに差し上げたところ、20 年経った今も使い続けてくれているそうです。
「その皿の姿を見たとき、経年変化以上のものを感じました。“器が育つ” とは、こういうことを言うのかと……。柳宗悦は、『作物にも二つの生涯がある。作られるまでの前半生と、作られてからの後半生と』と言っているのですが、作られたものが、使い手によって育てられることを後半生と呼んでいます。日本らしさとは、この後半生、つまり使い手の創造力に価値があることなのだと思っています」

#3

手仕事で作られたものの
心地良さ

ギャルリ百草には、オランダシリーズをはじめとする定番の食器や結界シリーズなどの立体作品が並んでいます。その一つひとつがすべて手作り。安藤さんは、あくまでも手仕事にこだわります。
「東日本大震災の後、岩手県で個展の予定があり、さすがに中止か延期にしようと主催者の方に申し出たら、こんなときだからこそ開催してください、と言われました。場や人、器をなくしたことでその重要さが分かり、手仕事で作られた器を家庭で使う心地よさが忘れられないとおっしゃられて、それが心に残っています」

手塩にかける、手間暇かけるなどの言葉からも読み解けるように、手仕事から生まれたものには、作り手の愛が込め られている。その愛を、使い手が受け取り、さらにその愛を育てていく。日々の暮らしの中でそんなやりとりができ るのは、ささやかだけれど、幸せなこと。 「手仕事の対極に工業製品がありますが、産業革命が誕生したヨーロッパにおけるその矜持はとても深い。マラルンガ は工業製品ですが、品質を守り続けるという点において見方を変えれば手仕事とその根っこは同じだと感じています。 なぜなら、それを享受した作り手も使い手も、そのものに対して語るべきことがたくさんあるからです」

(完) (前編はこちら

#プロフィール
安藤雅信 Masanobu Ando
陶作家、ギャルリ百草廊主。1957 年、岐阜県多治見市生まれ。武蔵野美術大学彫刻学科卒業後、日本人の美意識への興味から多治見に戻り、焼物を学ぶ。現代美術作家として活動しながらも、アメリカやインドへの旅を経て、日本人であることに対する意識やチベット仏教の基本的な思考などを獲得していく。結婚後、焼物制作へと基軸を移し、97 年「古道具坂田」で開催された「オランダ白釉陶器展」にインスパイアされ、その後の方向性が決まり、98 年古民家を移築して「ギャルリ百草」を開廊。2000 年に代表作となるオランダ皿が完成。和洋問わず使用できる日常食器の定番を1,000 種類以上制作、彫刻的な作品や様々な茶道具も発表している。
https://www.momogusa.jp

ギャルリ百草・ももぐさカフェ
〒507-0013 岐阜県多治見市東栄町2-8-16
TEL:0572-21-3368

ソファメンテナンスについて

カッシーナ・イクスシーでは、皆様に末永くご愛用いただけますようアフターサービスとしてメンテナンスのご相談を承っております。マラルンガソファの張替えでは、カバー交換以外に中綿の交換やウレタンの補修まで行うことが可能です。メンテナンスをすることで見た目だけでなく座り心地も新品同様の快適さをお届けいたします。何かお困りの点がございましたらお気軽にご相談ください。
※ソファの種類によりメンテナンスの内容は異なります。

BEFORE

BEFORE






生地の貼り替え

中綿交換

ウレタンの補修
AFTER

AFTER

張替えサービスの商品お預かり期間:
国内張地をご希望の場合:約1〜1.5ヶ月程度
輸入張地をご希望の場合:約5〜6ヶ月程度
※工場の混み具合、ご依頼内容により前後いたしますので、予めご了承いただけますようお願い申し上げます。
※張替えサービス、メンテナンスはカッシーナ・イクスシーでご購入いただいた家具に限ります。

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