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井田幸昌展 Panta Rhei |パンタ・レイ − 世界が存在する限り

 

井田幸昌展 
Panta Rhei|パンタ・レイ − 世界が存在する限り

物件概要
所在地:京都市京セラ美術館 本館南回廊2階
設計:シオ建築設計事務所 担当/子浦中、川鍋哲平、大金司
写真:淺川敏
 
 
 
01
本プロジェクトは、画家・現代美術家である井田幸昌氏の作品を京都市京セラ美術館で展示するための会場設計である。

展示会場は、ハイサイドライトからの自然光が特長な、大きさや開口位置が異なる6つの独特な細長い回遊式展示室で構成されていた。井田氏の作品は、絵画や立体作品など多岐にわたる。今回の展示では、6つの作品タイプを展示し、それらをどのように配列するかについての設計打ち合わせが重ねられた。作品とは別に、エントランス、ショップ、音声ガイドコーナーの設置が必要とされていた。これらの条件から、会場を9つのスペースに分け、作品を展示することとなった。
 
 
 
02
9つのスペースは以下のように構成される。 まず来館者がエントランスに入ると、曲線を描いた壁に包まれ、次の展示室へ導かれる。最初の展示室であるROOM1に入ると、来館者は作品が向かってくるような迫力のある展示に驚かされる。ここから、来館者は井田氏の作品の深遠な世界に誘われる。
 
 
 
03
ROOM2では、等間隔に並ぶブロンズ作品を周遊しながら鑑賞する。ROOM3では、黄色の壁が展示に対する期待感や幸福感を抱かせる。抽象作品が壁一面に展示されたROOM4は、壁と作品が一体化しているようである。この展示方法により、来館者は作品を近くで鑑賞したり、遠くから鑑賞を行う。
 
 
 
04
ROOM5には300枚の作品が壁一面に展示されており、来館者は展示室の中心からたくさんの作品を見上げたり、お気に入りの作品を探しながら、作品に近づいて鑑賞する。ROOM6では、迫力のある木彫刻がランダムに並べられ、来館者の好きな順番で鑑賞する。

最後の展示室である黒い壁に囲まれたROOM7には、大きな作品が一つだけ展示されている。この展示室はハイサイドライトを塞ぎ、自然光が入らないようにした。そうすることで、他の展示室との異なる雰囲気が醸成され、来館者は静寂に包まれながら大きな作品に対峙することになる。
05
展示を鑑賞した後は、ショップへと移る。ここでは、丁寧に作られたグッズ一つ一つを額に入った作品のようにディスプレイした。ピンクで仕上げられた壁は来館者の気分を高揚させ、作品のようなグッズの鑑賞や買い物を楽しむ。

本プロジェクトでは、エントランスやショップを含む9つの異なる展示スペースを作ることで、作品の魅力を最大限に引き出すような展示とした。既存の白い矩形の展示室に壁を建てたり、色をつけたりすることで、来館者が自然と展示に没頭できるような空間を作った。それらが来館者に、より作品に入り込んで鑑賞するという行いを誘発させた。
 
 
 
展示に使用した椅子は、木製オリジナルチェアの「arrow chair」である。矢印のような三角形の四本足とひじ掛けから名付けたこの椅子は、後脚を90 度振った前脚が特徴的な椅子である。座った時に体に触れる部分は全て丸みを付けることで座り心地を良くし、椅子が壊れないように新JIS規格の区分5相当(公共施設用に求められる強度・耐久性)を確保した。
「井田幸昌展」では展示空間に合うように、オールブラックの仕様と座面がファブリックの仕様を製作し採用した。

(子浦中/シオ建築設計事務所)

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