WEB MAGAZINE2021.3

Overnight stay
at hotel azabu ten
(前編) Reporting by Noriko Kanzaki

住宅、オフィス、商業施設、文化施設……さまざまなシーンで選ばれているカッシーナ・イクスシーのプロダクツ&デザイン。

2019年5月、東京・麻布十番にオープンした、コンパクト・ラグジュアリーホテル「hotel azabu ten」では、カッシーナ・イクスシーが客室全9部屋とフロント、ホテルのダイニング「totanuki」のデザインプロデュースを担当しました。

都会の隠れ家──そんな形容がぴったりハマるホテルの設えと居心地をレポートします。

- theme - 「淡い」をたゆたう

ほんのりと江戸の下町風情を残しながらも、大使館などの壮麗な建物やマンション、ハイセンスな個人邸宅が建ち並ぶ東京・麻布十番。そんな閑静な住宅地にオープンした「hotel azabu ten」は、9部屋だけの小さなホテル。モダンなファザードに掲げられた控えめなサインボードを見逃してしまうと、ここがホテルだとは気がつかないかもしれません。

#1

God is in the details
カラーとマテリアルの妙に抱かれて

1階はレセプションとダイニング、地下1階はリビングエリアとベッドルームにロフトを備えたLuxe( ツイン) が2部屋、2階と3階はSuperior(ツインかダブル)が5部屋、4階はリビングルームを備えたPremiere(ツイン)が2部屋、そして屋上は、東京タワーが望めるガーデンテラス。

それぞれの部屋は、二十四節気をよりどころにした和の色合いがテーマとなっています。

二十四節気とは、四季が巡る日本の一年間を24の季節に分けたもの。春分、夏至、秋分、冬至などは今でもよく耳にする言葉ですが、白露(はくろ)や霜降(そうこう)など、聞きなれないけれども季節の機微の美しさを表した9つの二十四節気をピックアップし、それぞれの部屋のイメージコンセプトに採用。そこからテーマカラーを導き、ヨーロッパのクラシカルなテイストでインテリアをまとめています。

たとえば、晴明(せいめい)、303-Seimei(Superior ツイン)。
春分から15日ほど過ぎた4月5日頃を清明と呼びます。桜が咲き始め、森羅万象すべてのいちのが輝き、喜びにあふれる季節です。明るい日差しの中、空を見上げると春霞。白ともピンクともグレーともつかない淡い色合いが世界を優しく包み込んでいます。オフホワイト、ベビーピンク、ライトグレー…。日本の伝統色で言えば、桜色、象牙色、生成り色あたりでしょうか。

部屋は、ほんのりとした桜色をベースとして、ライトグレーやライトベージュがグラデーションのように施されています。カラーリングのバランスを絶妙に発揮しているのが、バスルームのモザイクタイル。透明感がありながら春霞のイメージを喚起させます。キュートなのに甘すぎない、その“さじ加減” が、カッシーナ・イクスシーのクオリティだなと唸ってしまいました。

あるいは、白露(はくろ)、001-Hakuro(Luxe ツイン)。カレンダーでいえば、9月の上旬。あと2週間ほどで秋分の日を迎える「白露」。実際には、まだ暑い日が続きますが、ふとした瞬間に秋の気配が見え隠れする頃です。朝、草木に露がついているのを見つけたときなど、まさに、読んで字のごとく「白露」の季節なのだなと感じます。ほのかなライトグレーからオフホワイト、そして白の輝きへと続くグラデーションに誘われる、秋の始まり。

部屋は、地下一階にありながらロフトを備えた天井高がスペースの広がりを与えています。坪庭からは自然光が差し込むので、閉塞感を抱くことなく「お籠り」ができるユニークな設え。パールグレーの淡い色合いをメインに、白と黒がポイントカラーになっているスタイリッシュな組み合わせは、自宅の部屋にも応用できるインテリアのヒントがたくさんありそう。

中でも、hotel azabu ten の特徴のひとつである、窓際にレイアウトされたバスルームの水まわりプロダクツは、インテリア好きにはたまらないラインナップ。011-Hakuro は、KOHLER の猫足バスタブを採用。グレーのマーブル、そして庭のグリーンに囲まれた様が、決まっています。ちなみに、お隣の002-Soukou の部屋(Luxe ツイン)は、唯一、入口側にバスルームがレイアウトされていますが、宝石のように美しいと言われている(!)、憧れのDornbracht(ドンブラハ)を採用。思わず気持ちがアガってしまうでしょう。

9部屋どの客室も、インテリアの全体的なトーンは、シンプルで品が良く、「見て、見てこのデザイン!」というような迫りくる押しの強さはありません。ですが、303-Seimeiのモザイクタイルひとつをとってみても、Luxe の水栓の選び方にしてみても、マテリアルへのこだわりは相当なもの。ほとんどの壁は塗装で、部屋ごとに異なるニュアンスカラーを実現しています。また、カーテンやヘッドボード、カーペットも特注で、目立たないけれど一手間も二手間もかけた仕上げになっていて、全体のクオリティを支える名脇役の仕事をきっちりと務めています。

(つづく)

プロフィール
神﨑典子 Noriko Kanzaki
東京生まれ。フリーランスの編集・ライターとして、人物インタビュー、旅、落語、料理、幼児教育などをテーマに雑誌・書籍・webで活動。某自動車メーカーのオーナーズマガジンにて、宿と食をテーマにした連載を12 年以上担当(現在も継続中)。
2008年、横須賀市秋谷へ移住。心の師匠である思想家で環境活動家のサティシュ・クマール師が提唱する「Soil、Soul、Society」を軸とした暮らしを実践中。
動植物と人との本来の共生をテーマにした一般社団法人EARTH BOOK 理事。https://www.earth-book.com
手がけた本に『春風亭一之輔のおもしろ落語入門』(小学館)、『家庭菜園でできる自然農法』(学研プラス)、『学びを支える保育環境 づくり』(小学館)などがある。

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