WEB MAGAZINE2025.8

NOT A HOTEL CEO 濱渦伸次さん
✖️
カッシーナ・イクスシー代表取締役社⻑ アレッシオ・ジャコメル
クリエイティブを創発する、複合型ワークスペース

「世界中にあなたの家を」をコンセプトに、国内外の建築家やクリエイターが⼿がけるデザイン性とIoTなどのテクノロジーによる快適性を両⽴した、ハイエンドな別荘を提供するNOT A HOTEL。2025年7⽉、晴海に新しい複合型ワークスペースが完成し、カッシーナ・イクスシーの家具を採⽤されました。NOT A HOTEL CEOの濱渦伸次さんとカッシーナ・イクスシー代表取締役社⻑アレッシオ・ジャコメルが新オフィスで対談を⾏いました。

#1

NOT A HOTELの
働き⽅や哲学を体現した空間

晴海に完成したばかりのNOT A HOTELのオフィスを訪れると、出迎えてくれたのはピエール・ジャンヌレのヴィンテージ家具、その奥には全⻑15mのビッグテーブルが置かれ、ヴァージル・アブローのスツール「モジュラー・イマジネーション」が並んでいます。倉庫建築を改修し、ビッグテーブルのある「ラウンジ」を中⼼に、執務⽤の「ワークスペース」、NIGO®⽒がプロデュースした「THE NIGO LOUNGE」から構成され、オフィス機能だけでなく、イベントスペースやラウンジ、商談スペースとして使われます。全体のディレクションは同社の建築チーム「NOT A HOTEL ARCHITECTS」が⼿がけ、単なるワークスペースにとどまらない、NOT A HOTELの働き⽅や哲学を体現する空間です。

▲ オフィス内のプルーヴェハウスで対談が⾏われた。

「これまでフルリモートでしたが、5年間で社員が300⼈を超え、拡⼤していくなかで会って話せる場所は必要だと感じていました。ただ、普通のオフィスはフレキシビリティがなくて、好きじゃなかったんです。ここはいろんなスペースがあって、フレキシブルに使えるようになっています」と濱渦さん。

さらに、「オフィスには引⼒が⼤切」と続けます。「スタッフには『来ても来なくてもいいよ』と⾔っていますが、⾃然と集まってくるのは、オフィスとして引⼒があるからだと思います。このオフィスは床もそのままだし、そんなにお⾦をかけているわけじゃないのですが、やはり家具の⼒だと思いますね」

#2

ヴァージルのスツールしかないと思った

濱渦さんは、個⼈的な家具コレクターでもあります。新オフィスにジャン・プルーヴェが設計した「プルーヴェハウス」があり、これが置ける広さと天井⾼の建築を探し、晴海の倉庫にたどり着いたそうです。

「もともとIT業界でアパレルのeコマースをやってきたので、家具はまったくの素⼈でした。でも、NIGO®さんをはじめ、いろんな⼈からの影響もあって、『⾃分もいつかプルーヴェのスタンダードチェアが欲しいな』と思うようになったのが家具に興味をもったきっかけですね。最初は趣味で集めていましたが、NOT A HOTELは興味が仕事に広がっていった感じです」

ワークスペースでは、カッシーナ・イクスシーのプロダクトが多数採⽤されています。ラウンジで印象的なのが、ビッグテーブルに沿って並ぶ30個ものヴァージル・アブローのスツール「モジュラー・イマジネーション」。

「このビッグテーブルは⾞輪が付いていて、動かすことができます。ヴァージルのスツールは積み上げたらスピーカーのように⾒えるし、テーブルがなくても、いろんな⾵に使える。すごく機能的なので、これ以外に選択肢はなかったですね。NOT A HOTELはNIGO®さんやファレル・ウィリアムスがアドバイザーを努めてくれているのですが、ヴァージルとNIGO®さんは交流があって、ストーリーがつながっているなと思いましたね。このスツールはすごく座り⼼地が良くて、座ると『欲しい!』という⼈が多いんです」

▲ ビッグテーブルとヴァージル・アブローによるカッシーナのスツール「モジュラー・イマジネーション」。奥に⾒えるのがプルーヴェハウス。
#3

クリエイターをリスペクトする姿勢

カッシーナ・イクスシーの家具を採⽤した理由について、濱渦さんは「クリエイターをリスペクトする姿勢が共通している」と⾔います。

「僕は、誰をリスペクトするかが、ブランドの鍵だと考えています。以前、スティーブ・ジョブズがナイキのことを『スニーカーのブランドではなく、アスリートをリスペクトするブランド』と評していて、まさにその通りだなと。僕たちも建築家やデザイナーをリスペクトしており、その姿勢があるからこそコラボレーションが実現していると思っています。カッシーナ・イクスシーもクリエイターをリスペクトしており、通ずるところがあると感じています。僕はシャルロット・ペリアンやプルーヴェのオリジナル家具を所有していますが、リプロダクトが嫌いなわけではなくて、素晴らしいデザインを次の世代に残していくためには、リプロダクトも⾮常に重要。多くの家具ライセンスを保有し、受け継いでいる姿勢も素晴らしいと思います」
それに対してジャコメルも、NOT A HOTELの魅⼒を「思想の明快さ」だと⾔います。

「単なる建築やビジネスモデルにとどまらず、⽣き⽅そのものを再定義するような提案だと思います。所有、アクセス、ライフスタイルのあり⽅を美しく、そして意識的に再構築している。それは⾮常に現代的で、同時に深い意味をもっています。カッシーナ・イクスシーは、⼈々の暮らしを豊かにする家具をデザインすることを理念としており、NOT A HOTELが建築、⾃然、体験を⼀体化させているその姿勢は、まさに私たちの⽬指す⽅向と⼀致しています。利便性ではなく、“意味”を追い求める。その姿勢に、深い共感と尊敬の念を抱いています」
#4

普段からいい家具に触れる⼤切さ

ワークスペースにはキッチンが備え付けられ、円テーブルにもカッシーナからジオ・ポンティの「スーパーレジェーラ」やマリオ・ベリーニの「キャブ」、アリアスからはマリオ・ボッタの「セコンダ」などが採⽤されています。

「このテーブルは打ち合わせだけじゃなく、僕らのデザインのサンプルにもなっているんです。ここにあれば、ショールームに⾒に⾏かなくてもいいですし、提供する側が実際に良い家具を使うことは⾮常に重要だと考えています」

▲ ワークスペースの円テーブルはデザインの異なる10種類の⿊い椅⼦を合わせている。
▲ 打ち合わせスペースには、ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンによるスウィベルチェア「7 FAUTEUIL TOURNANT, DURABLE」がずらりと並ぶ。
〈後編〉
⾃然と建築、家具が調和した
NOT A HOTEL ISHIGAKI EARTH
濱渦 伸次

1983年宮崎県⽣まれ。国⽴都城⾼専電気⼯学科卒。2007年株式会社アラタナを創業。
2015年M&Aにより株式会社ZOZOグループ⼊り。株式会社ZOZOテクノロジーズ取締役を兼任。2020年4⽉1⽇NOT A HOTEL株式会社を設⽴。

今回納品したアイテム

230 MODULAR IMAGINATION
CASSINA
7 FAUTEUIL TOURNANT, DURABLE
CASSINA
413 CAB
CASSINA
699 SUPERLEGGERA
CASSINA
SECONDA
ALIAS