日本家屋、ゆらぎの美

日本家屋、ゆらぎの美

20世紀を代表するドイツの建築家、ブルーノ・タウトが来日して京都の桂離宮を見学したとき、その美しさに感動し、「パルテノン神殿と桂離宮は世界の二大建築物」だと褒め称えたというエピソードが残っています。伝統的な日本家屋が少なくなってしまった現在(いま) となっては、私たち日本人も、その凛とした佇まいの日本家屋に足を踏み入れた途端、80年ほど前に異国から訪れたゲストと同じような郷愁を抱くかもしれません。
洋の東西を問わず、日本家屋の美しさの何が、見る者の心を惹きつけるのか──。さまざまな要素がありますが、自然との調和がその一つであることは間違いないでしょう。四季のうつろいを日々の暮らしの中で感じられるしつらえ、屋外と屋内を分断することなくゆるやかにつなぐ縁側の配置、紙と木という儚げだけれどもしなやかな強さを持つ素材……。
縁側に座ってぼんやり庭を眺めていると、美しいゆらぎの中でグラデーションを描きながら、自然と調和していく自分に気づくことができるでしょう。日本家屋にいると何だか落ち着く、そんな居心地の良さを感じるのは、人は自然の一部であるという感覚を思い出させてくれるからなのかもしません。

日本家屋

伝統工芸や伝統文化の世界においては、伝統の技や芸を大切にしながらも、そこに革新的なセンスや先端技術を調和・融合させたもの(あるいは芸)が注目されることで、(博物館の中で時が止まってしまうのではなく)その本質をライブで後世に伝えていくことができます。日本家屋や古民家に住まうことも同様。昔ながらの良さをそのまま残しながら、現代的なセンスを上手に取り入れて暮らしたいものです。そんな願いをサポートしてくれるのが、家具やインテリア雑貨の数々。

まずは、家族や気のおけない仲間が集い、わいわいと会話やコミュニケーションを楽しむ空間であるサロンのコーディネートをご紹介しましょう。サロンには、曲線が美しいソファ、テーブル、チェア、ラグを選んでみました。格子模様など日本家屋の直線的なしつらえに曲線を組み合わせることで、有機的な空間が誕生します。積み重ねてきた時間が醸し出す控えめで奥ゆかしい空間に、ジャン・マリー・マッソーのソファやチェアが優美にそして饒舌に語りかけてくる……そんなコントラストが、にぎやかなサロンの雰囲気を、さらに盛り立ててくれることでしょう。

日本家屋

ゲストをもてなす応接間は、シンプルで研ぎ澄まされたデザインのソファとテーブルで組み合わせてみました。畳に格子という和の空間に、洋の家具がしっくりと馴染んでいるのは、どんな空間にも合わせられる普遍性を持つソファのLC2、自然からインスピレーションを得て作られたペリアンのREFOLO、日本のお盆がヒントになっているというサイドテーブルのTOREIを選んでいるから。畳の上に敷いたラグが、お互いの質感を違和感なく融合させる緩衝材の役割を果たしています。また、壁のない和室の特徴を活かし四方を開けてレイアウト。どこからでもアクセスできる“正面性のなさ” が、二元性では語ることのできない和洋折衷の調和に一役買っています。

日本家屋

食卓を囲むダイニングのテーマは、つながり。人と人をつなぐ食事、人と食事をつなぐテーブル&チェア、窓から見える自然と室内をつなぐ家具……。そんな多様なものごとの間を取り持ち、全体をひとつにまとめる大切な役割を色彩が担っています。ダイニングのコーディネートには、マリオ・ベリーニの傑作、CABの新作カラーの中から、グレーとブルーをセレクトしました。しっくりとその場に馴染み一見すると落ち着いて見えるけれど華やかさのあるこのチェアの中間色が、庭の自然や建具の色合いと空間を、ほどよく馴染ませてくれます。また、日本家屋のダイニングに合わせるには、サイズが大きく骨太なイメージのある洋家具のテーブルやシェルフは、ガラス素材を選ぶことでボリューム感を調整。ゆるやかなつながりの中に見る、インダストリアルなテクスチャーと和素材のコントラストが、インテリアのアクセントとして効いています。

日本家屋

屋外でも室内でもない、境界線(エッジ)の空間である縁側。近所の友だちとおしゃべりしたり、昼寝をしたり、本を読んだり、お茶したり。日常の中にある“あわい”の空間は、人と自然、時間と空間、光と影を分割することなく包み込んでくれます。心に染み入る、縁側の居心地の良さ。

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縁側のガラス窓を閉めれば、そこはサンルームに早変わり。コーナーにお気に入りのチェア、CABチェアを置くだけで、とっておきの空間が仕上がります。日がな一日、読書三昧。贅沢な時間。そして、いつのまにか夢の中へ……なんてことになりかねませんが、一度はやってみたい休日の過ごし方。