時空を超えて、美しき日本家屋

Photo : Keisuke Ono
Text : Noriko Kanzaki

時空を超えて、美しき日本家屋

ヨーロッパを旅していると、古い建物を上手にリノベーションして暮らしている(あるいはショップを開いている)人や光景に出会い、いつも「すてきだな」と感心してしまいます。もちろん、ヨーロッパの建築素材の基本は石やレンガ。木や紙といった“儚い”素材を使った日本家屋とは耐久年数が違うのは明らかなのですが、スクラップ&ビルドを良しとする価値観だけでなく、温故知新を大切にする文化がしっかりと根付いていることを実感させられます。

日本でもここ数年、「多様性」という言葉があらゆるジャンルでキーワードになっていて、それを尊重するムーブメントがあちらこちらで見られるようになりました。古い日本家屋や古民家をDIYやリノベーションして住んだり、カフェを始めたりという人のライフスタイルも注目を集めています。

機能性を重視した都会のマンションから、郊外の日本家屋に好んで引っ越す人も少なくありません。彼らは古さの中に新しいセンスを取り入れながら、心地よいと思える“今”の空間をクリエイトしています。だから、ちょっとした“不便”すらも、自分たち流の楽しみに変えることができるのでしょう。

懐かしいのに、新しい。そんな感覚を抱かせてくれる古い日本家屋や古民家には、今という時代に流れる新鮮な風を受け入れ、そして調和する“懐の深さ”があるようです。もしかしたら、時空を超えたその深みに、日本独特の美しさが宿っているのかもしれません。

日本家屋

和洋折衷という言葉が示すように、日本人は和風と洋風をほどよくミックスさせてオリジナリティをつくりだすセンスに長けています。異なる何かを融合させるときのポイントは「ほどよく」というところにあるのだと思います。白か黒かと分断するのではなく、和という縦糸に洋という横糸を織り込んで、美しいグラデーションを描き出すようなイメージ。だから、古い日本家屋にモダンな西洋の家具を選んでも、違和感なくしっくりと落ち着いた、それでいて個性あふれるインテリアに仕上がるのです。

障子を通して差し込むやわらかい光と座り心地のいいソファ。ゲストとともにコーヒーを飲みながら、ささやかだけれども美しい時間を共有する。これぞ至福のひととき。

畳にソファを置くことに、まだ少しだけ抵抗があるという人には、MUNI CARPETSのラグをおすすめします。MUNIが現代に蘇らせたクラシカル・チャイニーズ・ラグは、ココ・シャネルやフランク・ロイド・ライトなどをも魅了した文化的価値の高い絨毯です。和と洋をつなぐ架け橋として、これほど最適なアイテムは他にないでしょう。

自然素材である木の美しさが際立つWOODLINEのラウンジチェアやMERIBEL、BERGERのスツール、そしてメタル脚が全体のアクセントになっているVOLAGEのソファ。新旧、和洋、異素材…すべてにおいて、バランスと調和のとれた気持ちのいい空間になりました。

日本家屋

日本家屋は、とてもフレキシブル。襖や障子を用いれば、一人で篭るスペースも、大勢で宴会ができるスペースも、簡単につくれてしまいます。つまり、住まい手の自由な発想ひとつで、どんな空間をも演出できるということ。
例えば、プライベートの時間を過ごすために襖で仕切った居間には、マリオ・ベリーニのCABシリーズを2脚、それぞれタイプが違うラウンジチェアをレイアウトしてみました。読書をするとき、考えごとをしたいとき、音楽を聴きたいときなど、気分に合わせてチェアを変えるという贅沢な喜びが待っています。
また、円形のラグや丸いフォルムの照明をコーディネートすることで、緊張感のある直線の世界に柔らかさをプラス。心身ともにリラックスできるプライベートなひとときをお過ごしください。

アウトドア

木陰にアウトドアユースのテーブルとチェアをコーディネートするだけで、自然に囲まれたガーデン・ラウンジに早変わり。BGMは木々を揺らす風の音と小鳥たちのさえずり。なんて贅沢な空間なんでしょう!緑の中で映えるように、あえて選んだのは真っ白な家具。自然の色とのコントラストが効いています。

縁側

縁側越しに庭を眺めるということができるのも、日本家屋ならではの魅力のひとつ。自然を愛でるだけでも、心身が癒されます。清楚なフォルムが柔らかい印象を与える名作テーブルPLANAやMUNIのチェアラグ、床の間のアート作品などで、落ち着いた和の空間をデザインすれば、癒し効果はさらにアップすることでしょう。