INTERVIEW - VOL.28 Franco Ceccotti
(フランコ・チェコッティ)

CECCOTTI COLLEZION(チェコッティ・コレツィオーニ)の新作発表に合わせて創業者であるフランコ・チェコッティ氏が来日し復刻プロダクトシリーズ「MASTER’S TRIBUTE(マスターズ・トリビュート)」に新しく加わったSTELLAGE 52(ステラージュ 52)、NÒS (ノス)の制作秘話、そしてこれからのチェコッティ・コレツィオーニのものづくりについてお伺いしました。


STELLAGE 52 インスピレーションの源となった
椅子との再会

約3年前に、1950年代にトリノの建築スタジオで活動していた、この椅子のデザイナーGabetti & Isola, Raineri(ガベッティ&イソラ, ライネリ)の関係者と連絡を取り合い、この椅子を商品化できないかと相談の連絡を貰ったことから「ステラ―ジュ 52」のプロジェクトが始まりました。

私は自分の記憶や本で見聞きした中で、最も影響を受けた50年代から60年代のプロダクトの特に好きなものをリストアップするようにしています。その中の一つに偶然この椅子があったのです。

この出会いは本当に幸運でした。
写真上:1950年オリジナルプロダクトのスケッチ
ミーティングの場では、実際の椅子を持ってきてもらえるようにお願いし、実物を見ることができました。ひと目で気に入り、彼らの気が変わらないうちにと試作を前に契約を進めることにしたのです。
この椅子はガベッティ&イソラ, ライネリがデザインした証券取引所のために80脚ほど作られたもので、製作されたのは70年以上前のことです。取引所がクローズしてしまった後に商工会議所が建物を買い取り、その中にわずかにこの椅子が残されていました。通常の椅子は下側の木の部分が接着されて立体になりますが、この椅子はネジで止めしているだけの非常に繊細な作りで、ほとんど全てが形を留めておりませんでした。その為唯一、デザイナーの息子たちが1、2脚だけを保存している状況だったのです。(残された椅子の1脚は現在ニューヨークのMoMAにてパーマネントコレクションとして保存されています。)

そして、唯一息子たちが所有している椅子を買い取り、このプロジェクトが具体的に始まりました。 元々この椅子には名前はなく、トリノの証券取引所の椅子と長い間呼ばれていました。「STELLAGE」は証券取引の専門用語(複合選択権付き取引)、「52」は1952年にデザインされたところから「ステラ―ジュ 52」と名前づけました。

最先端テクノロジーと
職人技術の融合

この非常に繊細な作りのフレームの開発にはベテランの職人と協力することが必要でした。最初に苦労した点は、ステラ―ジュ 52の断面の形状が四角く、はっきりと角が残るデザインだったことです。通常チェコッティ・コレツィオーニの家具は丸みのある楕円形のフォルムであり、普段使用している機械では再現が難しいことがわかりました。そこで、角を正確に表現できるこの椅子専用の工作機械を導入し、現代の最先端のテクノロジーを駆使して製作に取り組みました。

強度と美しさを兼ね備え
よりタイムレスなデザインへ

また、この椅子は全体がピン接合構造であり、背座クッション部もその構造の一部であったため、強度を出すことが課題でした。オリジナルの椅子はネジが上部のみ使用されているだけで、これでは強度が十分でない上に、見た目も満足のいくものではありませんでした。そこで、培った職人の技術で真鍮のパーツをオリジナルと同じように製作し、強度と美しさを兼ね備えた仕様に仕上げました。

このように、チェコッティ・コレツィオーニの復刻家具はオリジナリティを尊重しながらより精度を高めることをポリシーとしています。


NÒS 偶然の出会いが続いたNÒS

高い技術で木工家具を製作していたベルニーニ社が1950年代から製造していた「MODEL 530」という名前のデスクが「NÒS(ノス)」 のオリジナルです。10年以上前、「ステラ―ジュ 52」同様私のお気に入りのリストに入っていたこのデスクに、偶然アンティーク市場で出会い入手することができました。私が所有しているものはローズウッドで作られたシャッタータイプのもので、鍵の仕様も今回発表されたものとは異なります。

MASTER’S TRIBUTE
再現プロジェクトへの想い

製作のきっかけはジャンフランコ・フラッティー二の関係者と偶然連絡を取り合ったことから始まりました。彼らはチェコッティ・コレツィオーニの商品に大変魅了されていて、この机を所有していることを伝えると「なぜチェコッティ・コレツィオーニで作らないのか」と冗談交じりに言われたほどです(笑)その後、喜んで制作を引き受けることにしました。
写真上:フランコ氏所有 ベルニーニ社 MODEL 530
先に述べたように私たちは、この再現プロジェクトにおいて、できる限りオリジナルに忠実な仕上がりを目指しています。そのため、古風な構造の鍵を手に入れるのに大変な苦労をしましたが、古い金具屋を巡り同じ仕様の鍵を仕入れるなど時間をかけて再現に努めました。 オリジナルとの相違点は、材質がローズウッドからアメリカンウォールナット材に変更したこと、そして引き出しの内側をビーチ材(ローズウッド材の物もあった)からメープル材に変更したことはより上質な仕上がりを目指した証です。また、オリジナルの鍵は金属が剥き出しのままでしたが、今回は鍵の表面を木工で加工してシームレスな美しいデザインに仕上げています。私たちはこのプロジェクトに全力を注ぎ込み、最高の仕上がりを達成できたと自負しています。
写真上:NÒS
ミラノの方言でウォルナット材のことをノスと呼ぶところから付けられた。

Timeless designー CECCOTTI COLLEZION 2つの「品質」

チェコッティ・コレツィオーニ イタリア・トスカーナの工場

ーTimeless designー
CECCOTTI COLLEZION 2つの「品質」

チェコッティ・コレツィオーニのアイデンティティは、「製品の品質」です。それは、私がいる限り変わることはありません。私はアートディレクターとしての肩書きを持っていますが、いつも「アートディレクターのフランコ・チェコッティ」ではなく、「品質保証人のフランコ・チェコッティです」と自己紹介しています。

「品質」には2つの意味があります。1つ目の「品質」は工業製品のように一寸の狂いもなく同じものを大量に作ることではなく、手作業の品質が感じられるようなモノづくりとしての「品質」を守ることです。2つ目は、普遍的でタイムレスなデザインを作り続ける「品質」を提供することです。30年前に作ったものも、今年作ったものも同じように組み合わせて使うことができます。私は「品質保証人のフランコ・チェコッティ」として長く丈夫に仕えることに加え、時代を超えていつの時代でもフィットするデザインを目指すことが、今までもそしてこれからも大切な使命だと感じています。
Franco Ceccotti
Founder & Art Director
家具製作工房の職人であったアヴィエロ・チェコッティを父にもつフランコ・チェコッティは1988年、チェコッティの最初のコレクションをミラノ サローネ デル モービレで発表し、デザイナーのロベルト・ラッツェローニと共に作り上げた数点の家具は、独自の存在感を持って高い評価を受けました。 オリジナルコレクションを発表以来、アートディレクターとして様々なデザイナーとコラボレーションする中でもチェコッティ・コレツィオーニらしさを一貫して作り上げています。
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