FACETASM デザイナー 落合宏理

Photo:Yosuke Torii
Edit&Text:Yu-ka Matsumoto

この冬、期間限定でオープンしたショップ・イン・ショップ「 X - Christmas / Kiss / Collaboration 」。
Cassina ixc.の青山本店に突如現れた、この色鮮やかなレッドカーペットの異空間には、インテリア・ファッション・アート
といったカルチャーの垣根を越えて誕生した、スペシャルなコラボレーションアイテムが並びます。
今回はその中から、いま最も注目を集める東京ブランド〈ファセッタズム〉と作ったペットアクセサリーをご紹介。
デザイナーの落合宏理さんにアイテムはもちろん、インテリアやファッションシーンについても伺いました。

都市生活に合うペットアクセサリー

今回のコラボレーションにあたり〈ファセッタズム〉に製作を依頼したのはペットアクセサリー。落合さんにとっては初めて挑戦する分野でした。「ペットアクセサリーというのは僕としてもチャレンジングでしたね。でもカッシーナ・イクスシーというトップクラスのブランドと一緒に何かを作れるということはブランドとしてもポジティヴなことだし、プラスになると思って二つ返事でお受けしました。今回はただデザインするだけじゃなく、カッシーナ・イクスシーという1ランク上の場所で、いいものを理解したお客様に向けた商品を、いかに〈ファセッタズム〉らしく打ち出すかということを意識しましたね」。

カッシーナ・イクスシー青山本店

FACETASM  ドッグコリエ&リード、ドッグウェア ニットトップス、ドッグキャリーバッグ
FACETASM スリーピングクッション

日本国内外から引っ張りだこの落合さん。忙しい合間を縫っての今回のプロジェクトは大変なことも多かったのではないでしょうか。 「全然苦労はしてないんですよ。カッシーナのスタッフの方と商品を作るにあたって何度かお話をさせてもらったんですが、皆さん感覚がよくて言ったことがすぐに伝わるから、そこからどんどん膨らませていくという感じで、やりやすかったし楽しかったですね。デザインには国境がないので、もっといろんな分野との融合、いいコラボレーションができるんじゃないかな。こんな機会があったらまたぜひ参加したいです」。

FACETASM
ドッグコリエ&リード

FACETASM ドッグコリエ&リード
「〈ファセッタズム〉のベルトにも使っている小さなプリン型の鋲を首輪に付けているんですが、ハードな感じにはしたくなかったんです。それでリードをクリアにしたんですが、透明だったらユーモラスだなと思ったのと、今の東京の街にこのクリーンさがすごく合うなと」。

FACETASM
スリーピングクッション for dog

FACETASM スリーピングクッション for dog
「これは、僕の家に実際にある豹の毛皮のラグを工業用のスキャナーでスキャンしてプリントしたものなんです。よく見ると毛並みも写っているんですよ。ドッグマットとしてもOK、インテリアとしてもOKという高級感のあるものを作りたかったんです」。

FACETASM
ドッグキャリーバッグ

FACETASM ドッグキャリーバッグ
「定番のキャンバスバッグって僕もよく使っているんですけど、それにあえて犬用のネットをつけてみたらどうなるんだろうと。これはどこにもない感じが気に入っています。犬に限らず猫でも使えますし、頑丈なので書類も入れられる。色々な使い方をしてもらいたいですね」。

FACETASM
ドッグウェア ニットトップス

FACETASM ドッグウェア ニットトップス
「パンクの代名詞でもある『セディショナリーズ』のモヘアセーターのモチーフを使ったドッグウェア。カラーがポップなのでクリスマスに合うなと思って取り入れました。いかにもなパンクは東京っぽくないので、僕たちなりのセディショナリーズの解釈を加えてみました」。

デザイナー 落合宏理

■インテリアについて
ファッションデザイナーの目から見る“インテリア”についても尋ねてみました。
「難しいものだと思いますね。センスが問われるし、努力し続けなきゃ保てないし、トータルのバランスも考えなきゃいけないし。でも、いい空間、いいデザインのある場所には、いいモノがなければいけないとは思っています。というのも、僕は文化服装学院を卒業してすぐにテキスタイル会社に入ったんですが、その会社の人はみんないいモノを周りに置こうという意識が強い人たちだったんです。当時からパソコンはmac、家具はカッシーナ。そういう環境で20代を過ごせたことの影響をいまの自分の中にすごく感じるんです。だから、いい環境づくりが、いいクリエイションのために必要不可欠なのかな、と。カッシーナ・イクスシーの家具についてはそういう思いもあるので、今回のお話をいただけた時は本当に嬉しかったですね」。

デザイナー 落合宏理

近年ファッションデザイナーが家具をデザインすることも増えてきました。
「やっぱり一流のファッションデザイナーが作る家具ってグッとくるものが多いんです。エディ・スリマンやポール・スミスも作ってますよね。じゃあ僕たちも何か作ろうと思った時に、ワンアイディアは誰にも負けないものが出せるかもしれない。でも、それを10年続けろと言われたら続けられないと思う。だから、僕たちが今すべきことは、常にブランドとしてスペシャルな存在でいて、この人たちと一緒に何か作りたいって声をかけられる状態でいること、そういうポジションを作ることなのかなと思っています」。

コレクション
コレクション
コレクション
コレクション

■ファッションについて
今年は「LVMHプライズ」のファイナリストに選出、パリコレに初参加、そして新人賞から史上最短の3年で「毎日ファッション大賞」を受賞と、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。 「あまり身の回りに変化はないんですが、世界に対する感じ方は変わりましたね。今までは僕自身世界を意識しすぎてクリエイションを止めていた部分がある気がするんです。でも、東京で戦っていればそれが世界に通ずるんだってことがわかりました。僕たちが思っているほど東京は世界から知られていないんです。それをネガティヴに捉えるんじゃなくて、だからこそ”今の東京”を丁寧に見せれば、それはまだ誰も知らないカルチャーであり、武器だってことを若いデザイナーたちに伝えていきたいですね。あとは東コレが『アマゾン ファッション ウィーク東京』になったことで、〈バーバリー〉や〈アレキサンダー ワン〉がやったように、ショーが終わった次の日からアマゾンで何かしら買える世界がすぐそこまで来てるのも楽しみです。あっ、いいブランドってショーの時に座る椅子もやっぱりいいんですよ。だからカッシーナ・イクスシーとはショーでもコラボしてみたいですね(笑) いい椅子にはみんな座るべきだし。知識欲だけ高くて現場に行ってない人が最近多いから、そういうのはなくしていきたいですね」

FACETASM デザイナー 落合宏理
PROFILE
落合 宏理 Hiromichi Ochiai
1999年 文化服装学院卒業
2007年 自身のブランド「FACETASM」立ち上げ
2011年 S/S ’12 Tokyo Fashion Week にて初のランウェイ形式でコレクションを発表
2013年 第31回 毎日ファッション大賞「新人賞・資生堂奨励賞」を受賞
2015年 S/S’16MilanoMen’sFashionWeekアルマーニ/テアトロにてコレクションを発表
2016年 第3回 LVMH Young Fashion Designers Prize にてファイナリストに選出
S/S ’17 Paris Men’s Fashion Week にてコレクションを発表
第34 回 毎日ファッション大賞を受賞