WEB MAGAZINE2026.10

AURAS × CASSINA IXC 「観る」「聴く」「座る」から考える、
ラグジュアリーな体験

最高のホームシアターをつくるために必要なのは、最高の映像機器やオーディオだけなのでしょうか。光、音、映像、インテリア。そして、その中心にいる人の身体。AURAS(オーラス)が東京・六本木にオープンした新たなショールーム「AURAS Residential Experience Center (AREC)」には、それらを個別の設備としてではなく、ひとつの「体験」として捉える思想があります。その空間に置かれているのが、Cassinaのソファ MARALUNGA〈マラルンガ〉です。なぜ、最先端の映像・音響環境に、時代を超えて愛されてきたこのソファが選ばれたのでしょうか。AURAS代表取締役・山岡 裕和氏の言葉を手がかりに、「観る」「聴く」「座る」という身体的な体験から、これからの住空間と現代におけるラグジュアリーについて考えます。

#1

映画を見るための部屋から
暮らしを豊かにする場所へ

「ホームシアター」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、照明を落とした専用室に大きなスクリーンとスピーカーが並ぶ光景かもしれません。
もちろん、映画鑑賞に特化した空間もホームシアターのひとつです。しかし、AURASが考えるその姿は、決してひとつではありません。
映画の世界に深く没入するための場所。明るいリビングで家族と映像や音楽を楽しむ空間。ゲームやカラオケを通じて友人と時間を共有する場所。そこに暮らす人の趣味や家族構成、日々の過ごし方によって、求められる答えは変わっていきます。

「私たちが考えるのは、機器をどう置くかということよりも、その場所で何を体験したいのかということです」と山岡氏は話します。
つまりAURASの仕事は、決められた形式のホームシアターをつくることではありません。「その人が、そこでどのように過ごしたいのか」を見つめ、映像や音響、照明、インテリアを組み合わせながら、暮らしの風景としてかたちにしていくことにあります。
ARECのシアタールームも、映画を見るときだけ使われる閉じた空間ではありません。ひとりで音楽に耳を傾けることもあれば、家族と作品を楽しむこともあります。友人を招く日も、静かに身体を休める時間もあるでしょう。
ホームシアターとは、日常から切り離された「趣味の部屋」ではなく、ホームエンターテインメントを通じて暮らしを豊かにする住空間の一部です。その考え方が、ARECの根底に流れています。

▲大切なのは、何を置くかではなく、ここでどんな時間を過ごすか。オーディオルームにも、音響とインテリアをひとつの空間として考えるAURASの思想が表れています。
▲大切なのは、何を置くかではなく、ここでどんな時間を過ごすか。オーディオルームにも、音響とインテリアをひとつの空間として考えるAURASの思想が表れています。
#2

音は、スピーカーだけではつくれない

「音は響きです。ですから、いい音とは環境なのだと思います」

山岡氏のこの言葉は、AURASの音づくりを端的に表しています。スピーカーが生み出した音は、空間の中を伝わり、壁や床、天井、窓、そして家具に触れます。その反射や吸収の仕方によって、私たちの耳に届く音は大きく変化します。

ARECでは、硬いガラス面をできる限り避け、壁面に絹を用いるなど、素材そのものを音響環境の一部として設計しています。視覚的な美しさを整えるための内装が、同時に音の響きをつくる要素にもなっているのです。

家具もまた、オーディオの外側にあるものではありません。素材や形状は空間の響きに影響し、その座り心地は音を受け取る人の感覚を左右します。

▲大画面に映し出される映像と、空間全体に広がる音。その両方が調和することで、シアタールームは作品の世界に深く浸るための場所になります。

たとえ音響機器の性能が優れていても、窮屈な姿勢や落ち着かない空間で聴いていれば、その音を心から楽しむことは難しいでしょう。好きなインテリアに囲まれ、身体を安心して預けられる場所があってこそ、人は音に意識を開くことができます。光も同様です。照明を落とせば、家具の色や輪郭は次第に視界から遠のいていきます。

一方で、座面が身体を支える感覚や、空間を満たす音への感度は高まっていきます。いい音とは、機器の性能だけで完成するものではありません。建築、素材、光、家具、そして、そこにいる人の身体。そのすべてが調和して初めて生まれる体験なのです。

#3

「座る」ことを忘れるためのソファ

ARECのシアタールームにおいて、音と映像を最も豊かに受け取れる位置。その中心に置かれたのがマラルンガでした。
ここで求められたのは、単なる観賞用のシートではありません。
前方の映像とスピーカーだけでなく、左右や背面、天井から届く音を全身で受け取れること。長時間にわたって作品を楽しめること。そして、映画館の座席とは異なる、住空間ならではの深いくつろぎが得られることです。
山岡氏がマラルンガに見いだしたのは、そうした条件をひとつのデザインの中で満たす柔軟さでした。

▲シアタールームの中心に据えられたマラルンガ。包み込むような佇まいが、音響と映像のための空間に、住まいならではの心地よさをもたらします。

身体を包み込むようなクッションと、革がもつ柔らかさや適度な張り。さらに、背もたれを動かすことで、一人ひとりの体格や姿勢、そのときの過ごし方に合わせた調整ができます。

背もたれを高くすれば、頭まで預けてゆったりと映画を楽しめます。低くすれば身体の自由度が増し、後方から届く音もより自然に感じられます。同じデザインのソファでありながら、座る人それぞれに異なる快適さをもたらしてくれます。

家族の身長や体格が異なっていても、一人ひとりが自分に合った姿勢を見つけられること。それは、住空間の中で使われる家具にとって、非常に本質的な価値といえるでしょう。

▲背もたれの高さを変えることで、座り心地だけでなく、音の感じ方にも変化が生まれるマラルンガ。そのときの過ごし方に寄り添い、一人ひとりに心地よいポジションをつくります。

そしてマラルンガの魅力について語るとき、山岡氏の言葉はさらに核心へと近づいていきます。

「リラックスすると、座っていること自体を考えなくて済むんです」

身体のどこかに負担や違和感があれば、人の意識はそこへ戻されます。しかし、身体が自然に支えられ、「座っている」という行為さえ意識しなくなったとき、人は初めて映像や音の世界に深く入り込むことができます。最高のソファとは、その存在を強く主張し続けるものではなく、座っていることさえ忘れさせてくれるものなのかもしれません。マラルンガがARECの中心に置かれた理由は、その先にある「没入する体験」にこそあります。

#4

最先端であるほど、
存在を感じさせない

マラルンガが「座っていることを意識させない」ソファであるなら、AURASのテクノロジーもまた、「操作していることを意識させない」ためのものです。
映画を見るために、いくつものリモコンを使い分ける。音楽を聴く前に複雑な設定を行う。コンテンツに合わせて照明やブラインド、空調を一つずつ調整する。そうした操作が増えるほど、体験へ至るまでの距離は長くなってしまいます。

AURASが目指すのは、ボタンを押したり機器を操作したりする行為を可能な限り減らし、テクノロジーを日常の裏側に収めることです。

◀︎照明や音響、映像、空調などの操作を、ひとつのインターフェースへ。住む人の習慣や過ごし方に合わせて、操作画面やスイッチのあり方まで細やかに設計できます。
▲照明や音響、映像、空調などの操作を、ひとつのインターフェースへ。住む人の習慣や過ごし方に合わせて、操作画面やスイッチのあり方まで細やかに設計できます。
必要なときに、必要な環境が自然に整う。そこに高度な技術が使われていることを意識しなくても、映画を見たいと思えば映像と音と光が調和し、音楽を聴きたいと思えば空間全体がそのための環境へと変わっていきます。

その実現には、映像や音響、照明、ホームオートメーションを、建築が完成してから付け加えるのではなく、計画の初期段階から考える必要があります。

「家族構成や生活動線まで含め、住まい全体の中で考えることが重要です」と山岡氏は話します。

機器の配置だけでなく、人がどこから入り、どこに座り、どのように過ごすのかまで想像します。その積み重ねによって、テクノロジーは目立つ「機械」ではなく、建築やインテリアの延長として暮らしに溶け込んでいきます。

さらに山岡氏は、家具とプログラムによるオートメーションには、「付き合い方が似ている部分がある」と指摘します。優れた家具は、手入れを施しながら長く使い続けることで、暮らしや身体になじんでいきます。オートメーションも一度導入して終わるものではなく、子どもの成長や家族構成、生活習慣の変化に合わせて調整を重ねていくものです。
最新のテクノロジーと、長く受け継がれてきた家具。それらは対立するものではありません。いずれも人の行動と時間に寄り添い、使い手との関係の中で成熟していく存在なのです。

◀︎手をかけ、使い続けることで、暮らしになじんでいくマラルンガ。家具もテクノロジーも、時間とともに使い手との関係を深めていくという点で、どこか似ています。
▲手をかけ、使い続けることで、暮らしになじんでいくマラルンガ。家具もテクノロジーも、時間とともに使い手との関係を深めていくという点で、どこか似ています。

#5

ラグジュアリーとは
「意識しなくなる」こと

ラグジュアリーという言葉は、ときに価格や希少性、目に見える華やかさと結びつけられます。
しかし、AURASがつくる空間と、その中心にあるマラルンガから浮かび上がるのは、もうひとつのラグジュアリーの姿です。



山岡氏は、その感覚を「不満がなくなること」「気づかなくなること」「日常に溶け込んでいること」と表現します。
高性能なスピーカーが置かれていること。高精細な映像が映し出されていること。高度なオートメーションが機能していること。そして、マラルンガに座っていること。
その一つひとつを意識している間、私たちはまだ設備や製品そのものを見ています。
しかし、音響機器の存在を忘れて音楽に聴き入り、映像の精細さを忘れて物語へ没入し、操作していることも座っていることも忘れて、家族や友人との時間を楽しむ。そのとき初めて、個々の製品や技術はひとつの「体験」へと統合されます。

優れたものほど、人と体験の間に立ちはだかることなく、その存在を背景へと退かせていきます。それは、ものの価値が見えなくなるということではありません。むしろ緻密な設計と確かな品質があるからこそ、使う人はそれらを意識する必要から解放されるのです。
「観る」「聴く」「座る」。
それぞれを最高のものにすることだけが、ラグジュアリーなのではありません。
光も、音も、映像も、家具も、テクノロジーも、互いに主張し合うことなく、その場所で過ごす人に寄り添うこと。そして、その存在を意識しなくなったとき、人はようやく時間そのものに身を委ねることができます。

AURASが考えるホームシアターとは、映画を見るためだけの部屋ではありません。それは、人と空間、テクノロジーとインテリアがひとつにつながり、心から満たされる時間を生み出す場所です。現代の住空間におけるラグジュアリーとは、そうした体験を、特別な演出としてではなく、自然な日常として享受できることなのかもしれません。

AURAS
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AURAS(オーラス株式会社)は、高級住宅のスマートホーム、ホームオートメーション、ホームシアターを建築計画から設計・施工まで手がける専門会社。ラグジュアリー住宅専門のホームテクノロジーインテグレーターとして活動しており、映像、音響、光、それらをホームオートメーション技術で繋いだ、Luxuryな住空間の構築が可能です。「AURAS Residential Experience Center(AREC)」は、そんなLuxuryな住空間の完成図を体感することができるショールームスペースとして展開しています。

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