Special Interview VOL.1 Barbara Lehmann

「LC50」プロジェクト発表にあたり、Cassina S.P.A.の意図するテーマと概要についてお聞かせください。

LC50は、カッシーナ社によるル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンのデザインした
輝かしい家具コレクションの復刻50周年を記念すると共に、カッシーナブランドが現代デザイン史の中で
果たした象徴的な役割を今一度世界に認知していただくことを意図して企画されました。
モダニズムの巨匠達がデザインし、職人の工房で作られていた一点ものの家具を量産復刻することで、
カッシーナはこれらアイコン的なアイテムがコンテンポラリーデザインの象徴として世界中に知れ渡ることを
可能にしたのです。

2014年末のLC50の記念プロジェクトの発表を機に、将来を見据え、更なる革新を続けるために
LCコレクションに新たなカラーフレームと環境基準に適合した素材を導入いたしました。
2015年、カッシーナ社は復刻50周年、さらにはル・コルビュジエの没後50年を記念して
コンテンポラリーデザインのアンバサダーとしての責任を全うすべく、
様々な文化的かつプロモーショナルな活動を続けています。

例えばイタリアでは芸術的な側面から高い評価をされているテレビ局、「スカイ・アルテHD」と共に
ル・コルビュジエの生涯と一連の著名な家具コレクションの誕生秘話についてのドキュメンタリーを製作いたしました。
当該ドキュメンタリーは2015年4月、ミラノ・サローネのカッシーナ・シアターで初上映され、
現在世界各国での配給を検討いたしております。

更に文化的な活動としては、90年前に建設された「ラ・ロッシュ邸」で使用されていた
一点もののオリジナルフェザーパッドのLC2を新たに世界限定90台にて復刻いたしました。

また、ル・コルビュジエがレマン湖のほとりに建てた「ヴィラ・ル・ラック」の庭に植え、
病気の為に2年前に伐採された桐の木を用いたプロジェクトも立ち上げました。
カッシーナはこの木を用い、ル・コルビュジエの記憶をいつまでもとどめる為、
詩的情緒あふれる木のオブジェのデザインをアーティストのハイメ・アジョンに依頼しました。

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The Only Original since 1965についてお聞かせください。

1964年、ル・コルビュジエと共作者のピエール・ジャンヌレとシャルロット・ペリアンがまだ存命中の頃、
カッシーナはLCコレクションの最初の4つのモデルの生産を始め、
1965年にこれを公式に発表し、市場に投入いたしました。
従ってカッシーナのみがル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンの
デザインした家具を復刻する世界で唯一無二の権利を有しております。

復刻の過程においてはル・コルビュジエ財団ならびに共作者たちの意匠継承者、更には建築・デザインの
歴史家や専門家も加わり、戦前のオリジナルプロジェクトの意図や文献、製図等の徹底研究がなされています。
インターネットの普及により現在イミテーション品が氾濫していますがこれは市場に大きなダメージを
与えるばかりでなく、商品の品質やデザイナーという職業を根本から脅かすものであります。

カッシーナはデザイン文化を庇護し、品質を維持向上しながら革新をし続けるために、
イミテーションを排除するための戦いを続けることが極めて重要であると考えています。
その為にはコピー品の生産元に対する法的措置を取るばかりでなく、LC50のプロジェクトを通し商品の改良、
オリジナルに忠実な新基準の採用、さらにはコミュニケーション活動や文化的なプロモーションに
注力して行く必要があると捉えております。

LCコレクションの自発的な改良を財団や意匠継承者と地道に続けることにより、オリジナルプロジェクトの
高いクオリティーとコンテンツとは程遠いコピー品を市場から排除することを目的としています。

Please provide us with the utmost technical details and description of “ECO FRIENDLY”

カッシーナは将来を見据え、LCコレクションに採用しているフレームを見直すことに着眼いたしました。
今なお家具業界で多用されている六価クロムよりもはるかに自然界においては安定した毒性の少ない三価クロムを採用し、
より低いクロム価数による大気汚染や土壌汚染の可能性を軽減化することを宣言いたしました。

錆びや腐食が少なく、見た目が美しいという観点から採用されていた六価クロムは
既に自動車産業などでは使用が禁止されており、カッシーナは家具業界では先陣を切ってこの問題に取り組んでおります。

さらに同時に、ポリエステルとポリウレタン製のマイクロファイバーを使用し、
環境にやさしいオーガニックレザーを新たに採用いたしました。

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LCコレクションのフレームカラー見直しにあたり、特に留意した点はございましたか?
また、決定までの経緯についてもお聞かせください。

これまでのコレクションで採用されていたカラーフレームはいずれも1970年代に共作者の一人であり、
数々のオリジナルプロジェクトにも係わっていたシャルロット・ペリアン自身により導入されました。
今回新たにLC50で発表されたカラーフレームはいずれも美術館所蔵のコレクションや過去文献、
あるいはラ・ロッシュ邸の改修工事などの過程やル・コルビュジエの建築の各プロジェクトで採用されていた
原型を研究家の方々と共に技術的な開発をし、より一層色のニュアンスを忠実に復元したものとなっております。

LCシリーズ復刻生産開始について

2014年初頭からカッシーナの研究開発チームはLCコレクションの素材を精緻に渡り研究。
社内での生産工程のならびに下請け工場での生産サイクルを事細かにモニタリングし、
新規改変・改良のための具体的なソリューションやテストを繰り返して参りました。
商品の研究リサーチ、ミーティングやブレインストーミング、ディテールの認可には
ル・コルビュジエ財団と共作者の意匠継承者が常に出席、関与しております。

ル・コルビュジエ没後50周年という節目にあたり、ご自身の印象、お気持ちはいかがですか?

「伝統と革新」という理念に基づく我々のあくなき探求の道は今なお続いています。
カッシーナ・イクスシーを含むパートナー企業各社と共にI Maestri Collection(巨匠コレクション)、
I Contemporanei Collection (コンテンポラリーコレクション)の双方を通じ、
カッシーナの企業文化をより多くのエンド顧客の皆様に認知していただくと共に、
デザイン文化を広く波及浸透させることを社会的な責務として捉えております。

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今後LCシリーズのさらなる展開について、構想がありましたらお聞かせください。

LC50のプロジェクトの意義やそれが担う文化的なメッセージを、新しくリローンチした商品や
世界各地でのイベントの開催を通してより一層明確に認知していただければと考えております。
また、LC50のドキュメンタリーの放映を通じてル・コルビュジエのストーリーをより多くの方々に
知っていただくと共にLCコレクションのミニチュアモデルもワールドワイドに販売して行く予定でおります。

日本のお客様へのメッセージ

是非「ホンモノ」の「オーセンティック」なデザインアイテムを買うことにより
創造性や真の意味での高品質を身近に感じていただきたく思います。
ニセモノやコピー品の品質はオリジナルよりも遥かに劣るばかりでなく、
デザイナーが当初意図していた崇高な目的にダメージを与えるものです。

カッシーナの商品は優れた品質と時代を先取りした確かな技術力に裏打ちされ、
伝統的な手工芸の緻密さと最先端のテクノロジーと工業生産の手法が適用されています。
細部へのこだわりがカッシーナ商品を唯一無二たらしめ、いずれも耐久性に優れていると共に
時代を超えてその価値を増して行く所以となっております。

Barbara Lehmann
Barbara Lehmann
1995年ミラノ工科大学にて内装デザインのPhDを取得。
1995年から2002年までミラノ工科大学助教授として「内装」ならびに「プロダクト&家具デザイン」に係わる教鞭を執りました。
1998年から1999年にかけてはミラノのトリエンナーレ博物館におけるパーマネントコレクションのデータベースを作成。
1999年以降、カッシーナ社のヒストリカル・コレクションやアーカイブの編纂・キュレーションを行ない、カッシーナの展示会のキュレーター、刊行物、ウェブサイトやビデオ、カタログなどの編集管理を行なっております。 特に2008年にはミラノ工科大学教授のジャンピエロ・ボゾーニ氏と共にカッシーナ社の創立80周年を祝しトリエンナーレで行なわれた「メイド・イン・カッシーナ展」の企画・コンセプト作りと運営を一手に担当。キュレーターとして当該展覧会のカタログの編纂にも従事しました。
カッシーナ社での活動はキュレーターとしての役割のほか、建築家や意匠継承者との文化的な係わりやこれら個人や団体と具体的な製品・プロジェクト復刻の為のコーディネーション、意匠管理を行なっております。 殊にカッシーナ社の歴史やル・コルビュジエ、シャルロット・ペリアン、フランコ・アルビニに係わる展覧会の企画・運営には欠かすことのできない存在として「カッシーナ社の宝」と呼ばれています。