WEB MAGAZINE2023.7

ずっと一緒にいたいから。
愛する猫とユトレヒトの暮らし
インテリアスタイリスト
石井佳苗さん

オランダの建築家でデザイナーのヘーリット・トーマス・リートフェルトの代表作のひとつであるユトレヒト ソファ。「シンプルなのに、構造のおもしろさそのものがデザインになっていて、秀逸。大きく見えるけれど思いの外コンパクト、それなのにゆったりと座れます」ユトレヒトの魅力を端的に、そして的確に語ってくれたのは、インテリアスタイリストとして雑誌や広告などで活躍をしている石井佳苗さん。

かれこれ18年のユトレヒト愛用者で、今回2度目の張り替えを済ませた一人掛けソファがリビングに戻ってきました。石井さんの素敵なご自宅におじゃまして、ユトレヒトとの暮らしについてお話を伺いながら、インテリアスタイリングの秘訣なども教えていただきました。前後編でお届けします。

- 後編 -
インテリアとはその人そのもの
言葉にはならない内面が映し出される

#1

すべてのものが繋がり
調和を生み出す石井マジック

昨年の秋に上梓した最新刊『Heima 住まいの感覚を磨く9つのキーワード』(扶桑社)やオンラインでのインテリア講座が大評判の石井佳苗さん。石井さんが「いいな」と思って選んだ家具や雑貨やアートが、石井さんの手によって収まるべき場所に収まると、その場に調和が生まれます。
▲本棚の上にびっしりと並ぶオブジェたち。たくさんあっても、要所要所まとまりで見せることよって不思議と気持ちの良い空間が出来上がっています。
ユトレヒトの在るご自宅のリビングルームも、けっして広々としたスペースではないのに、しかも、仕事用のデスクやダイニングテーブル、飾り棚、本棚など、大小いろいろなものがレイアウトされているにも関わらず、ゴチャゴチャとした感じは微塵もなく、すべてが有機的に繋がり、気持ちのいい“奥行き”のようなものが立ち上がってくる……。そんな石井さんのスタイルに、誰もが魅了されてしまいます。このセンスの源泉はいったいどこにあるのでしょう? 石井さんのインスタグラムの投稿にこんな一文がありました。
『インテリアに興味を持ち始めたのは、お部屋を増築してくれた14歳から。今から40年前ですが、今でも嬉しくて嬉しくて大興奮だったことを思い出します。母に“自分で選びなさい”と言われて、大工さんと床、壁、天井材や照明を選んだ事、作り付けの家具のイラストを鉛筆で描いて大工さんに説明した事、カーテン生地を母と選びに行き縫ってもらった事、デスクとベッドしかない6畳の部屋でしたが、自力で家具を移動して模様替えを楽しんでいた事…。今の私とほとんど変わってないじゃないか!笑』

自分の部屋を自分の「好き」で設えていくことにワクワクした少女が、大人になってからスーパーレジェーラと運命の出合いをし(前編参照)、インテリアの世界を歩むことになったのは、ごく自然な流れだったのでしょう。
「スタイリストになって、いろいろな現場をたくさん経験させてもらいながら自分なりに学びを積み重ねてきて、今朝も掃除をしながらふと思ったのですが、 自分の中の“純度”が高いときのほうが、いい仕事ができているなって。駆け出しのスタイリストのときは、とても純度が高かったと思うのです。その後、紆余曲折ありながら、大変なこともありましたけれど、今また最初の頃の純度に戻って、気持ちよく自分の好きな仕事をさせてもらえていることに感謝しています」
#2

まずは主役を選んでレイアウト
そこから空気の流れが変わる

ユトレヒトをリビングのメインに据えてインテリア全体をイメージした石井さんは、張り替えが終わって生まれ変わったユトレヒトも、以前と同じ場所にレイアウトすることにしました。
「同じ色調で同じデザインですが、張り地が革になったことで、やはり空間のイメージが少し変わったかな。落ち着いた感じになったので、後ろの棚の飾りをいくつか間引くことにしました。
今どきって、割とスッキリしたインテリアが多いじゃないですか。私は、そこまでスッキリさせるつもりはないのですが、少し空間を持たせた方がいいかなと思って。こんなふうに、ものがひとつ加わるだけで、あるいはそのものの質感が変わるだけで、空気の流れが変わります。空気が流れるって、風水的にもとても良いそうです」

引っ越しや家の改修でもしない限り、大きな家具を買い足す機会はあまりないかもしれませんが、本当に「いいな」、「好きだな」と思える逸品と出合ったときこそ、空気を変えるチャンスなのかもしれません。風水的にも、それは良い気を運んでくれそうです。
「主役級の大きな家具をレイアウトしたら、あとは、モノが多くても少なくても、美しく配置するのがポイントです。美しくとは、見たときに気持ちいいと感じるかどうか。雑然としている中にも美しさもありますし、スッキリしていればいいというものでもない。その塩梅が大切です」
▲窓際に配置されたデスク。眼下の自然を楽しみながら、一日の始まりをリフレッシュした気分で迎えることができそう。
#3

値段や流行で判断するのではなく
本当に自分が愛するものだけを選ぶ

石井さんが手がけるコマーシャルや雑誌の連載、ポップアップのセレクトショップなどを拝見して感じるのは、そこに集められたもののひとつひとつが、どれも素敵で、物語を秘めていて、作り手の温もりが感じられるものばかりだということ。いつもハートの奥の方がゾクゾクっとしてしまいます。どうすれば、石井さんのような審美眼を持ち、好きなものに出合うことができるのでしょうか。

「私の場合は、やはり仕事柄いろいろな所に出向いてたくさんのものを見ているので、仕事中でも瞬時に個人の目にスイッチが切り替わって『あ、これかわいいな』『いいな』『好きだな』と思うものと出合う機会が多いのだと思います。今は、SNSなどで情報はたくさんありますから、それを見て気になったら、ぜひ実際にそのものを見に行くことをお勧めします。そして、手に取れるものであれば手に取って『いいな』『好きだな』と感じるかどうか、ご自分の感覚を大切にしてみてください。

誰かが持っているから、流行っているから、値段が安いから、という理由ではなく、本当に自分が『いい』と思えるものだけを選んでいけば、どんどんと好きなものと出合っていくはずです。 インテリアは、自分そのもの。自分自身と向き合いながら五感を磨くことで、言葉にならない何かがこうしてものになって表れる。その結果として、その人にしか作れない、見えない空気感や雰囲気を醸し出してくれるのです」

▲石井さんの「好き」で集められたオブジェたち。

石井佳苗 Kanae Ishii

アパレル業界を経て、カッシーナ・イクスシーに10年間勤務。店舗店長や雑貨コーディネイトの外部講師などの経験を積み、インテリアスタイリストとして独立。インテリアだけでなく、衣食住のライフスタイルを中心に暮らしまわりのスタイリングも得意とする。雑誌、書籍、広告、企業とのコラボレーションで商品開発を手がけるなど多岐に渡って活躍。 数年に一度開催されるPOP UP SHOP『DAILY LIFE』、オンラインのインテリア講座『Heima Home Design Lesson』も大人気。

公式インスタグラム:@kanaeishii_lc

ソファメンテナンスについて

カッシーナ・イクスシーでは、皆様に末永くご愛用いただけますようアフターサービスとしてメンテナンスのご相談を承っております。マラルンガソファの張替えでは、カバー交換以外に中綿の交換やウレタンの補修まで行うことが可能です。メンテナンスをすることで見た目だけでなく座り心地も新品同様の快適さをお届けいたします。何かお困りの点がございましたらお気軽にご相談ください。
※ソファの種類によりメンテナンスの内容は異なります。

Before

After

張替えサービスの商品お預かり期間(ユトレヒトの場合):約6〜7ヶ月程度
※ご依頼内容により前後いたしますので、予めご了承いただけますようお願い申し上げます。
※張替えサービス、メンテナンスはカッシーナ・イクスシーでご購入いただいた家具に限ります。