Mario Bellini - マリオ・ベリーニ
Cassina and Mario Bellini

A PASSION CALLED

MARIO BELLINI

SINCE 1967: A LONG RELATIONSHIP

CASSINA AND MARIO BELLINI
ベリーニは若い時からカッシーナとの協業を始めています。 チェーザレ・カッシーナと最初に出会った際には、自身が初めてコンパッソ・ドーロを受賞した作品であるテーブルのプレゼンテーションを行い、以後現在に至るまで両者は固い絆で結ばれ様々な革新的プロジェクトを生み出しています。60年代、70年代にマリオ・ベリーニとカッシーナとの間で行われた様々な実験的なプロジェクトはその後オリジナリティー溢れる最先端デザインの創出へとつながっていきました。新素材の応用や構造上の技術革新により生み出されたのが“TENERIDE”のプロトタイプや“BREAK”チェアなどの画期的なプロダクトです。

1967 TEXTILE STRUCTURE

932
テキスタイルの応用“932”
「“932”の布張のシステム家具は1967年に私がカッシーナの為に手がけた最初のプロジェクトです。組み合わせたり、バラしたりすることが可能なこのシステム家具は、それまでにない革新的なアプローチのアイテムであったと思われます。恐らく“932”のテキスタイルベッドはイタリアの家具史上初の布張りベッドだったのではないでしょうか。“932”の開発には多くの痛みを伴いましたが、カッシーナ社の持てるあらゆる技術力とリソースを出し切った作品であったと自負しています。当時としては急進的過ぎるというレッテルを貼られましたが、それゆえに現代においても何ら遜色なくマーケティングできるのではないでしょうか。」

1970 TECHNOLOGY AND INNOVATION

TENERIDE
技術と革新“TENERIDE” 「ある時、バイエル社が開発した最新テクノロジーで、発泡した際に自ら皮膜を張るポリウレタンがあると聞きました。それを元に非常に薄いスパイラル状のスチールの芯で強度を確保したゴム状のジョイントを考案しました。ただ、あまりに斬新なテクノロジーであった為、実験的プロトタイプの作成よりも更に先までプロジェクトを進めることができなくなってしまいました。オフィス家具を手がけておらず、そのような市場を持たないカッシーナの方向性と乖離しすぎてしまっていたのがその理由でした。」

1968 A NEW SPACE FOR CASSINA

CASSINA’S FIRST SHOWROOM
カッシーナの新しい空間“初のショールーム”1968年に、カッシーナは初のショールームをミラノのヴィア・ドゥリーニにオープンしました。革新的であると賞賛されたデザインは、マリオ・ベリーニによるものでした。「私はスリーヴのように2重になったダブルウォールに半透明の布のライニングを施し、ギャラリーのような空間を作りあげました。中に家具を配置し、その後ろにプロジェクターで強い光を当てると家具が完璧な影絵のように浮かびあがりました。こうしてル・コルビュジエの家具をシンボリックに際立たせることができたのです。」

1972 CONCEPT - CAR

KAR-A-SUTRA
コンセプトカー“Kar-a-Sutra”
“Kar-a-Sutra”(カーラ・スートラ)は工業デザインを車に応用するというコンセプトでした。このコンセプトカーは、1972年にNY の近代美術館が“イタリアンデザインに捧げる”とした一大展覧会「イタリア・新しい国内のランドスケープ展」に出品されました。斬新なコンセプトは自動車業界に大きな影響を与え、その後登場したモダンなミニバンやファミリーカーの先駆けとなりました。

1973 LE TENTAZIONI

誘惑
「このプロジェクトを遂行する上で私が思い描いていたものは、形を成さないほど不確かで、複雑で、いわば「誘惑」に駆られたインスピレーションを形にするという、カッシーナの研究開発センターにとっても極めて難解なテーマでありました。ある日フランチェスコ・ビンファレが私のオフィスに椅子を作る為に必要な材料を持ち込んで来たので、木の枝と羽根で形を作り始め、そこから何ヶ月にも渡りカッシーナでの試行錯誤が繰り返されたのです。パディングがなく、布をまとってはいても布張りのされていない、まるで亡霊のように、存在しない椅子の形を無作為に作っているようなものでした。やがて、パディングはなくともキャンバス地に詰められたガチョウの羽根の不均等な塑性により形が作られ、通常の固定型の構造ではなく四本の木製の支柱が互いにゴム製のテンションの張力により支えられている構造の椅子を作り上げることができました。」
“TEMPTATIONS”

1976: CODIFTING FURNITURE

IL LIBRO DELL’ ARREDAMENTO
家具を記号化する 「デザインは死んだ:その葬儀は1972年にニューヨークの近代美術館で開催された“イタリア・新しい国内ランドスケープ展”で営まれた。椅子は薪にくべられ、スタイルやデザインは女性誌のコラムやモダンなキッチン家具を売っている店の看板になった。」と同展の開催を主導した一人であるマリオ・ベリーニは語っています。そもそもベリーニは、「Il Libro dell’Arredeamento(家具の本)」を編纂しデザインすることを意図していました。新しい家具・室内装飾の一般的な書籍を書くことにより、カッシーナの製品を紐解いていったのです。同書でベリーニは、家具の根本的な機能を明確にしつつ、家具の様式が、伝統的な形やフォルムから逸脱することなく機能性や素材・仕上げによりいかに多様になり得るかを示しました。

1977:BODY FURNISHING

CAB
身体を装う
ベリーニの代表作の一つであり、カッシーナのコレクションにおいてもいまだベストセラーであるCABチェアは、1977年にデザインされました。人間の身体との関係性が何よりも優先されるアイテムとして、椅子は我々の共通認識の中に最も深く定着している家具の一つである、とベリーニは言います。つまり、CABは身体の延長として考えられたのです。レザーの張地がまるで手袋のように椅子のメタルフレームにフィットし、脚部に沿って走るジッパーが輪郭を際立たせています。

「椅子のあるべき形であり、今までもそのように作られてきた、背・座・4本脚のシンプルな構造の椅子(私はCABがそれだと信じている)をデザインする勇気を得るのに、およそ20年を要してしまいました。」とマリオ・ベリーニは記しています。

CAB LOUNGE
CAB NIGHT

2015:CABWORLD.

「1脚の椅子からホームコレクションを作り上げることはできるのか? 私が1977年にデザインしたCABチェアは、現在発売から38年経ちますが、全世界のダイニングテーブルに合わせて100万台近くが供給されています。そしてこのたび、ベッドやラウンジチェア、オットマンを新たに加えることによりホームコレクションを展開する運びとなりました。メタルのマネキンがテーラーメイドの厚革をまといつつ、軽くて、ミニマルで、透明な世界を織り成す。ワールドワイドなCABから、CABワールドへ。」 Mario Bellini May 2015

CAB LOUNGE
CABチェアのコンセプトが、アームチェアに応用されました。まるでテーラードスーツのようにメタルフレームがサドルレザーをまとい、構造的にも実質的にもしなやかな身体の形状を完璧にサポートしています。アームチェアの内側に添えられたソフトレザークッションの効果もあり、CABラウンジは人間工学的にも驚くべき快適性を保証します。

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CAB NIGHT
CABナイトは、高品質な素材とディテールへのこだわりをベッドルームにもたらします。構造とベッドの脚部は、他のCABファミリーと同様サドルレザーが張り込まれ、特にパーツのジョイント部分には卓越したクラフツマンシップが発揮されている様子を見て取れます。ヘッドボードには稀少なソフトレザーが張り込まれており、身体を預けた時の幸福感を際立たせています。

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INTERVIEW

1. デザイナーになろうと思われたきっかけを教えてください。
第二次世界大戦中、田舎の祖父母の家に疎開をしていた時、近くに住む叔父の家の窯からレンガを盗んで扉と窓、さらには壁紙のある小さな家を作りました。 その際、空間というものをどう捉え、そこで過ごしたり明かりを取り入れたり、広がりを持たせるにはどうするべきなのかということを認識したのかも知れません。 やがて自分の将来を考える時期を迎える頃には、文化・アート・科学そして技術を同時に究めることができる、ミラノ工科大学の建築学部以外に自分の進む道はあり得ないと考えました。 当時のミラノ工科大学の学長はピエロ・ポルタルッピで、私はジオ・ポンティやエルネスト・ネイザン・ロジャーズらの元で学ぶことができました。 教授や同期の学生達と共に私達は多くの研修旅行を重ね、ある時はアブルッツオのロマネスク調の建築物を究めたり、またある時にはトリエステのネオクラシック調の建築物の研究をしたりしていました。 以来、私は毎年少なくとも一ヶ月は世界中を旅するようにしています。 旅を通じてそこに住まう人々、文化、人工的な景観と自然の景観の相関関係、街の美しさ、都市計画の意義、広場やモニュメントなど、あらゆるものを観察し、研究することができたのです。
2. 今までされたデザイン、プロジェクトで特に印象に残っているものはありますか?
最も印象深いプロジェクトは何であったか・・・。 これは非常に難しく回答することができません。 もしかすると問3がそれに該当するのかも知れません。
3. 今回、名作CABシリーズに新たなラインナップが加わりましたが、誕生までの経緯や特に留意した点についてお聞かせください。
1977年にデザインをし、38年目を迎えたCABチェアは恐らく百万台単位のテーブルの需要を掘り起こしたのではないかと思われます。そして今般ベッド、ラウンジチェアとオットマンを加えホーム向けのコレクションを新たに発表する運びとなりました。 こうして出来上がった「CABワールド」は、表には見えないミニマリストなメタルの骨組みにテイラーメードのサドルレザーを着せるというオリジナルフォーミュラをそのまま保持しつつ、さらにそのレンジを広げて行くことができる一つの世界観を形成しています。
4. 創造性の原点やデザイン・インスピレーションの源は何ですか?
私は日常生活の中で見かけるオブジェに一抹のユーモアを加えることを試みています。若い時からモノを人格化することが好きで、例えば台所にある漏斗(じょうご)に手と足をつけてみたらどうだろうなどと想像してみたり、家回りのオブジェの中に人の顔を発見しようとしてみたり・・・ 真面目な話、インスピレーションやクリエイション、創造性は言語を超えたものでないといけません。 創造物は自らが語るようでないといけないのです。
5. ご自宅はどのような空間に作りあげていらっしゃいますか?
「住まう」ということは洋服を着ることと同じであると考えられます。 自分の家をどのように作り上げるかということはすなわち、自分のニーズに合わせて自分の住まいをどのような特別仕立てにするかという事です。 私はずっとミラノに暮らし、都市文化圏に属して来ました。 街というのは非常に複雑に入り組んだファブリックの中に自分自身が住むことのできるカプセルを探すことを意味します。 私の最初の頃の住居はいずれも小さかったのですが、どれも感性を刺激するような素敵な眺めと庭を兼ね備えていました。 今はピエロ・ポルタルッピがデザインした19世紀の建物に住んでいます。 最初にこの建物を入手した時は荒れ果て、もの悲しい佇まいでした。 私は一方で30年代を象徴するようなエレメントを残しつつ、この建築物を私好みの人格とテイストに変えることにしました。 非常に高い天井の建物であることを踏まえ、今は3フロア分にもなる階段兼書棚が 住まいの大きなコアエレメントになっています。 このエレメントはリビングルームと寝室とキッチンのある中2階を階段で結んでいます。 私は年中階段を上ったり降りたりして、立ち止まっては本やレコードを探したりしています。 ある意味、私の家は巨大な書棚であり、その上を私が歩き、ものを見、さわり、読み、探しものをし、整頓する。細長いテーブルにもたれると、まるで望遠鏡で色々なパーツを見定めることができるように自分が必要としているものを一瞥して探し当てることができるのです。
6. 今後のデザインやクリエイションの展望について
デザインとクリエイションの未来をどう考えるか。 そのためには自身に以下の原則を課すことです: 「自分自身を信じなければそれは死を意味する。自らを信じ、それを貫徹することを確信せよ。好奇心がなくなったらやめてしまえ。その時は銀行員にでも何にでもなればいい・・・」と
7. 最後に日本のインテリアを愛する(ベリーニさんの作品を愛する)人々に一言
私の家具を愛用してくださっている方々にはこのようなメッセージしかお伝えできません: 「私が創作する際に楽しんだのと同じくらいに私の家具を利用し、暮らしながら存分に楽しんでください!」

PROFILE

マリオ・ベリーニ

建築家・デザイナーとして国際的にその名を馳せているマリオ・ベリーニは、コンパッソ・ドーロを8度に渡り受賞しています。他にも、建築・デザイン界への功績を称えられ、イタリア建築金賞(メダリアドーロ)、ミラノ市に貢献した人物に贈られるアンブロージョ金賞等を受賞。世界各国で講演会を行なうと共に、1985年から1991年まではDomusの編集長を務めました。ニューヨーク近代美術館には25点の作品が収蔵されており、1987年にはベリーニに捧げられた回顧展が開催されました。また、これまでにイタリア内外で数多くのアート、デザイン、建築に係わる展覧会を開催しています。

1980年以降は主に建築プロジェクトを手掛けていますが、主だったものとして有名なのは、ポルテロ国際見本市会場(イタリア・ミラノ)、ヴィラ・エルバ展示会場(イタリア・チェルノビオ)、東京デザインセンター(日本)、ルーヴル・イスラム芸術展示館(フランス・パリ)、欧州で最大規模といわれる新コンベンションセンター(イタリア・ミラノ)などです。

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