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VOL.20 ガラス作家 新實広記

<span>VOL.20</span> ガラス作家 新實広記
新實広記展─名づけられた光
昨年の9月に開廊したアート・ギャラリーDELL’ARTEにて、現在、初の作家展「新實広記展─名づけられた光」を開催しています。
この展覧会は新作展示会 “Welcome Home - Good morning ”の一環として併催されているもので、ガラスのアート作品を、昼と夜の部屋という2つのイメージで展示。光と空間の在り方を体感していただけます。
今回の展覧会に対する意気込みや見どころなどを、ガラス作家の新實広記さんにうかがいました。
DEDAR

「光を感じ、空間を体験する」

カッシーナ・イクスシーの担当者が新實さんの作品に魅せられ、その後イタリアのカッシーナ社の広告写真に掲載されたことがきっかけとなり、今回の展覧会へとつながりました。こうした異業種からのアプローチをどのように思いましたか?
カッシーナ・イクスシーといえば、いいもの・本物を取り扱っているお店だと認識していて、「いいものを見たいな」と思ったとき、美術館に足を運ぶような感覚でたまにショップに立ち寄っていました。ウィンドウショッピングですけれど(笑)。
実は、カッシーナ・イクスシーがアートを扱っていることを知らなかったので、展覧会のオファーをいただいたときは驚きました。担当者の方とお話をさせていただき、僕の作品のことをとても深く理解してくださっていることがわかり、とてもうれしかったです。それから、打ち合わせをしていて気付いたのですが、共通の視点や意識があり、何というか“共通の言葉”が使えたことも大きな推進力になりました。それはおそらく、異業種ではあるけれどカッシーナ・イクスシーも僕も“空間”を扱っているからなのかなと思いました。
ガラス作家である新實さんが空間を扱うとは?
僕は、大学で美術を学ぶ過程でガラスという素材に出会い、そのとき初めて、ガラスが砂でできていることを知って衝撃を受けました。そして、ガラスのことを知れば知るほど、不思議でおもしろくてのめり込んでいったのです。実は、もともと建築をやりたいと思っていたので空間というものに興味があり、素材の中に空間があるというガラスにも惹かれたのだと思います。また、昨年開催した富山ガラス美術館での個展『Feeling glass-感じとるかたち-』では、僕自身も見たいと思う空間を作りました。常々「ものではなく空間」を見せたいという思いが、僕の中にあるのです。
今回はどのような意図で展示をしたのですか? また、何か新しい試みはありましたか?
ガラスはふくらんだり、糸になったり、色をつけたりと、さまざまなことができる素材です。表現の可能性が広いので、僕も以前は、グニャグニャっとしたものや不思議なフォルムをした作品を作ってきました。けれど、その形にばかり目がいってしまい、ガラスの本質に気づかなくなってしまうのではと思うようになり、現在のような誰もが知っている形の作品を手がけるようになりました。シンプルなフォルムだと、ガラスは“光を取り込む”という本質が見えてきます。ガラスは光を見せる彫刻。なので、今回もそれぞれの方に、それぞれの光を感じていただきたいという意図のもとに展示をしました。
新しい試みとしては、作家展でありながら、他の人の作品である平面とコラボレーションをした点でしょうか。窓からの光というイメージで選んだ平面の作品を入れたことで、空間が締まり、空気がガラッと変わりました。
「Vessel球体」(2016)
「Vessel球体」(2016)
(左)φ45cm 重量124kg (右)φ30cm 重量36kg
「Vessel球体」(2016)
「Vessel円錐」(2016)
φ60cm × H30cm 重量73kg
ガラスの本質に対して、
新實さんは作家としてどのように向き合っているのでしょうか?
シンプルで誰もが知っている幾何形態は、一見すると人工的で感性がない形ですが、素材がガラスだと光が通ったときに感情が芽生えます。ガラスに光の生命が宿るのです。その本質をどのように表現できるのか。僕はガラスという素材を触りながらアクションをし、素材からの答えをキャッチして、そのプロセスを通してのセレンディピティを大切にしています。まずは素材ありきなので、下絵などはあまり意味がないので描きません。今はこのような幾何形態の作品が中心ですが、それも過程にすぎず、作品は単に頭で考えてどうにかなるものでなく、ガラス自体の持つ力に今後も素直に委ねたいと思います。
展覧会に来てくださる方達へ向けて、メッセージをお願いします。
日中の光と夜の光を感じていただけるように展示空間を分けています。光が落ちてきて、自分が浮遊しているような不思議な感覚に陥るかもしれません。ぜひともギャラリーに立ち寄っていただき、ものではなく空間と光を感じてみてください。それが僕の彫刻の在り方だと思っています。
「Vessel グラス」(2017)「Vessel グラス」(2017)
φ7cm × H11cm 重量1kg
新實 広記Hiroki Niimi
1976
愛知県豊田市に生まれる
2001
愛知教育大学大学院教育学研究科芸術教育専攻 修士課程修了
2001
「CGCA(creative glass center of America)fellowship」招待作家
ウィートンビレッジ / ニュージャージー・アメリカ
2002
「豊田の彫刻家たち」豊田市美術館市民ギャラリー / 豊田・愛知
2003
「20/20 VISION」アメリカガラス美術館 / ニュージャージー・アメリカ
「GLASS WEEKEND」ウィートンビレッジ / ニュージャージー・アメリカ
「とよたの新世代」豊田市美術館市民ギャラリー / 豊田・愛知
2005
「GLASS ART NOW 東海の現代ガラス展」瀬戸新世紀工芸館 / 瀬戸・愛知
2007
「再生による構築」個展 ギャラリープラネット / 名古屋
2008
「喜楽亭ー10の饗ー」 豊田産業文化センター / 豊田・愛知
2009
「FLAT GLASS -平面から浮かぶもの-」 瀬戸新世紀工芸館 / 瀬戸・愛知
「ガラスの変貌」ギャラリーヴォイス / 多治見・岐阜
2011
「瀬戸新世紀工芸館企画 新實広記・畑中篤 二人展」瀬戸新世紀工芸館 / 瀬戸・愛知
「SELECTION:01」MasayoshiSuzukigallery / 岡崎・愛知
「農村舞台アートプロジェクト」個展 細田神社農村舞台 / 豊田・愛知
2012
「ARTISTS FILE 04」MasayoshiSuzukigallery / 岡崎・愛知
2013
「Vessels」個展 masayoshi suzuki garelly / 岡崎・愛知
2014
「農村舞台アートプロジェクト」個展 加塩神社農村舞台 / 豊田・愛知
2015
「Vessel」コミッションワーク 野外彫刻 大手門タワー・JXビル / 大手町・東京
2016
「Feeling glass 感じとるかたち」 富山ガラス美術館 / 富山
「とよたルミアール・プロジェクト」 豊田市役所東庁舎 / 豊田・愛知
「現代ガラスの表現展」大一美術館 / 名古屋