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Jaime Hayon(ハイメ・アジョン) Designer

Jaime Hayon(ハイメ・アジョン) Designer

スペイン人アーティスト/デザイナー
1974年、スペイン・マドリッドで生まれ。
イタリア、スペイン、イギリスにオフィスを持つハイメが最も大切にしているのは、新しい挑戦と可能性の追求を継続すること。
彼のもつ視点はアートと装飾、そしてデザインの世界の境界線を曖昧にしつつ、
丁寧なクラフトワークと複雑なオブジェという形式をもってコンテンポラリーデザイン文化と一致させ、
家具、プロダクト、彫刻およびアートインスタレーションの作品世界を創出。
伝統的クラフトスキルを守る姿勢と新たなデザインに挑戦する彼の手法は、
世界の一流クライアントとの仕事に携わる中で、素晴らしい作品となって表現されている。

2006年「Elle Decor International Award」
2008年Elle Decorationドイツ版「Best International Designer」
2008年エル・デコ日本版「ベストデザイナー」
2008年ベルギーのインテリア・ビエンナーレ「ゲスト・オブ・オーナー」最年少受賞
2009年AD誌ロシア版「Designer of the Year」
2010年パリのメゾン・エ・オブジェ「Designer of the Year」

TIME「現代の最も活躍するクリエイター100名」
Wallpaper「近年最も影響力のあるクリエイター」

Réaction PoétiqueRéaction Poétique
1.今回のオファーを受けるまでの経緯と印象をお聞かせください。
これはある意味、プロジェクト当初から最終的にどこに行き着くか定かでなかったと言う点で非常に興味深い案件でした。
きっかけは、カッシーナがある問題を私に提起して来たところから始まりました。
当時、カッシーナ社はル・コルビュジエ財団から、ル・コルビュジエがレマン湖畔に建てたVilla le Lacに植えられた一本の木の件で相談を受けていました。

その木は、美しい建築の一部をなしていた為、非常に象徴的な要素を持っており、当初は年月を経て育ち、やがては湖を臨む建物の天然の屋根となることを意図して植えられていました。
誰しもがル・コルビュジエの計画通りになることを望んでいたのですが、残念ながら大自然はこれと異なる決断を下し、木は病気で死に、結果別の木を植えざるを得なくなりました。

伐採された木を用いて最初にカッシーナは鉛筆を作ることができないかと考え、ドイツの会社にこの話を持って行きました。
しかしながらこの手の木(桐)は鉛筆に適していないということで断念せざるを得ず、その後、私のところに何か作れないだろうかという話が持ち込まれたのです。

カッシーナは私がアーティストでありデザイナーであると同時に感受性が豊かであること。
さらにはフォルムと機能性を重視し、バランスの取れた作品を作ってきているのを見て、ル・コルビュジエと私自身との間に何かしらのつながりを見出し、依頼をして来ました。

私が最初に行なったことは、その木を用いて何が最適でかつ興味深いかを理解することでした。
この手の木は軽く、簡単に折れてしまう為非常に難しい材であることは確かでした。
病気で死んでしまっているのでまずは切って使用せねばならず、さらには全てのパーツを使うことが叶わないという前提がありました。

それらを踏まえた上で私達はこの木の由来と深く関係する一連のオブジェを作ることにしました。
そこで私が考えたのはこの木に備わっていない3つの要素を創作することでした。
まずは鳥。さらには吊り下げる為に必然的に木を要するブランコ。そして鳥が生息し、巣作りをするために必要な巣箱。
これらのオブジェを作ることにより、この木には新しい命が吹き込まれると考えたのです。
2.自身が思うル・コルビュジエについて
ル・コルビュジエは20世紀が生んだ非常に興味深い人物であり、様々な方面において進化と発展をもたらしたと考えています。
今を生きる世代にとっては多くのインスピレーションの源となり、影響を与えたと同時に我々が暮らす建築物等、生活をする上で非常に重要な役割を果たした人物だと思います。
私自身は彼が偉大なアーティストであり、色とフォルムを自身の世界観の中で見事に統合し、組み合わせたと考えております。
これは最初の質問への回答にもなるかと思いますが、ル・コルビュジエのこうした側面に私自身が感応したことが
「レアクシオン・ポエティック」のインスピレーションの源になったと言えます。
勿論Villa le Lacのプロジェクトを同時に引き受けていたことも「レアクシオン・ポエティック」を作る上で大きく影響しました。
3.「Villa Le Lac Paulownia」と「Réaction Poétique Collection」それぞれのデザインコンセプトを教えてください。
Villa Le Lac Paulownia
Villa Le Lac Paulownia
より詳細な説明をするならば、Villa le Lac のプロジェクトでパウロニア(桐)に新しい命を吹き込む為の構想を練っていた時、
私はル・コルビュジエに関する様々なリサーチを行ない、彼の彫刻を研究し始めました。
マドリッドで開催されていた回顧展にも行き、多くのインスピレーションを得ることができました。
そして、問題を解決するためにはル・コルビュジエに通ずる知的かつ繊細な方法でものづくりをしなければならないと考えたのです。
とはいえ、ハイメ・アジョンのスタイルでなければならない。というのも、カッシーナからは「君自身の創作したものが欲しい。
君でなければいけないんだ」という課題を与えられていたのですから。
ル・コルビュジエが残した詩的な要素とのつながりを保ちながらどのように創作することができるのか?

そこで私は、木にまつわる逸話とパウロニア(桐)の木に吹き込まれる新しい生命とを詩的に調和させ、
カッシーナの工房で一点一点丁寧に製作することにより、ル・コルビュジエに対する最大級の敬意を表することができると考えたのです。

これは桐が構造的なものを作るのに多くの妥協を要する材であることから非常に緻密に配慮されたプランであったと言えます。
ル・コルビュジエの回顧展を訪れ、モデュロールや建築、柱の使い方やプロポーション等彼の様々なセオリーを研究した末、
私は彫刻を作るというインスピレーションを得るに至りました。

ハイメの彫刻でありながら何かしらル・コルビュジエに通じるものがあるというのが「レアクシオン・ポエティック」の一連の作品です。
カラスを意味するル・コルビュジエへの敬意を表し、全てを黒く仕上げ、パウロニアの原木に透明なコーティングのみを施したVilla le Lacの作品群との対極をなしています。
従いまして「レアクシオン・ポエティック」のアクセサリーコレクションは全て黒。
木目は見えてもフォルムにより目が行くため、アクセサリーというよりも彫刻のごとき印象を受けます。
4.製品化までのプロセスの中で、いちばん大切にした部分や特に留意した点についてお聞かせください。
どちらのプロジェクトも個人的には非常に気に入っています。
一連の創作過程において、本物のパウロニア(桐)の木でモノづくりをするのは極めて複雑でした。
前述のように軽い木であったと同時に、たった一本の木しかなかったため、最善かつ、もっとも有効な方法で創作をする必要がありました。
テーブルを3台作り、それを以て完了とすることもできました。しかし今回のプロジェクトのようにいくつものオブジェを作ることにより、
多くの人々がル・コルビュジエの記念すべき木の一片を所有することができるのです。
さらに私個人にとっても、再びカッシーナの美しくスタイリッシュな工房で、全く世の人々とは違う考えを持ち、
伝統的デザインの技法を兼ね備えた超一流の職人たちと仕事をすることは、完成までの全プロセスと最終的な完成品の双方を存分に楽しむことができる経験となりました。
5.創造性の原点やデザイン・インスピレーションの源は何ですか?
今回に関して言えばル・コルビュジエのセオリーや彼個人の抱いていた夢が形と特性を以て木の作品の中に反映されたこと。
さらには木自体の持つ構造を究めることによって他に2つとないユニークな作品に仕上がったことではないかと考えます。
6.今後のデザインやクリエイションの展望について
私の創造力とデザインは高いクオリティーを追究するという点でより一層有効に作用しています。
また、世界中の様々な職人と緻密なものづくりをしているという点で手わざ、ハンドメイドであることを究めています。
私は以前よりも、ある一定の伝統やそれにまつわる要素を保ち続けることに専心する人間になって来ているかもしれません。
クリスタル細工や世界各地の磁器、真鍮、ブロンズなどの素材を用いて仕事をしていますし、デンマークの優良企業と布張りの家具を作ったり、
スペインの会社とも仕事をしたり、そして現在はカッシーナ社関わることにより頭の中も自らの手も「木」に染まっている状態です。
私のデザインは私自身の世界に深く係わっていると言えます。
つまり、アートやインスタレーション、内装そして時代を超えてその品質を保ち続ける、美しくしなやかなプロダクトが語られている世界です。
7.日本のお客様へのメッセージ
我々が作った作品は各々に物語があるというのが私のメッセージ。
一つ一つのプロダクトが我々の生きている時代、私の夢想する世界、手作りとは何か、そして人間の手の作り出す品がどれだけ純粋なものであるかを語っています。

どの作品もル・コルビュジエのように何かしらの価値を社会に還元してくれた人へのオマージュを内包しており、
今日、伝統の手業が将来の世代へと伝承されることがどれだけ重要であるかを表しています。

Rodrigo Torres(ロドリゴ・トーレス) Product designer

Rodrigo Torres(ロドリゴ・トーレス) Product designer

1976年、コロンビア・ボゴタ生まれ。
1997年デザインと建築を学ぶコロンビアの最優秀学生に贈られるマリオ・サント・ドミンゴ賞を受賞。
1998年ボゴタのホルヘ・タデオ・ロサノ大学でインダストリアルデザインの学位取得。
1999年ミラノのドムスアカデミーにおいてデザインの修士号取得。
2000年~2004年ステファノ・ジョバンノーニの事務所でデザイナーを務める。
2005年および2008年MorfeoチェアとMantaチェア でコロンビアのデザイン賞“Lapiz de Acero”を受賞。

ALESSI, Poliform, Oras, Nikeなどの国際的企業とコラボレーションしており、
ヨーロッパ、アジア、アメリカにおいて数々の著名なデザイン誌にも取り上げられている。

MembraneMembrane
1.デザイナーになろうと思われたきっかけを教えてください。
自分自身が置かれている環境を様々な形で想像し、その状況をより良くするための最善の策を追及する絶え間ない好奇心こそが、デザイナーになるきっかけだったと思います。
私はまだ幼い頃に、「モノ」が自身の文化の中で重要な役割を果たしており、それを創り改良することが社会や地球の為になることに気づきました。
デザインは自分の夢を現実の世界で実現する手立てを与えてくれたのです。
2.今までされたデザイン、プロジェクトで特に印象深かったものは?
私の作品の中には特定のプロジェクトの中で体現したいと思った価値を代弁するものが多々あります。
それらはプロジェクトの種類やそれが内包していた試練・挑戦によってそれぞれに違う魅力を持っています。
もしもプロジェクトの複雑さと環境的な側面に焦点を当て,1つだけ選ぶとしたら一番最近手がけた Alessi とOrasの商品でしょうか。
SENSEという、浴室とキッチンの為にデザインした節水機能のある蛇口です。
3.MEMBRANEの誕生までの経緯や特に留意した点についてお聞かせください。
Membrane の中に我々は「シンプル」、「美」、「快適」、「フレキシブル」などのコンセプトの融合を探し求め、
結果、教育の場、職場、住居等様々な環境に適合し、人間工学に留意したソフィスティケートかつスタイリッシュな商品を実現することができました。

私は椅子を構成する様々な要素の相互関係が「かたち」にそのまま反映され、分かり易く正直なモノを作りたいと考えました。
構造体の上にデリケートにフォルムを乗せる。そのありのままのコンセプトがこの椅子のデザインの源となっています。
最小限のかたちを統合しながらフォルムを作りあげて行くことを探究した結果、シンプルでありながら、しなやかで完成度の高い魅力的なプロダクトが完成しました。

ステッチやファブリック、さらには目には触れない部分、すなわち座を構造部にはめ込むシステムなどあらゆるディテールへの配慮がされています。
これこそが、日本のixc.ブランドの全商品が品質とこだわりを持って作られていることの証だと考えます。
カッシーナ・イクスシーの優れたテクノロジーのお陰で我々はいくつもの技術的な工程を一つに統合したソフトシェルを開発し、
柔らかな座としなやかな形を実現することができました。いずれもユーザーが快適にこの椅子を使い、様々な色展開の中から必要に応じた装飾的チョイスができるようになっています。
4.創造性の原点やデザイン・インスピレーションの源は何ですか?
創造力の源を定義するのは非常に難しいです。私は幼い頃からクリエイティブな人間でした。
生まれながらにしての才能なのでしょうか、母は私をおとなしくさせる唯一の方法は紙と色鉛筆を与えることだったと言っています。
私のインスピレーションの源は生活そのものから来ると言っても過言ではありません。膨らみ行く「必要性」や「力」、さらには人間に与えられた試練など。
人間の行動や社会的・形式的な慣習、自然と自然自身が織り成す永遠の魔術、新旧のテクノロジーなどをもとにデザインや力強い比喩的創造物が生まれます。
建築、アート、音楽、映画、イラスト、漫画などのポップカルチャーは脳に活力が溢れ幸せであり続けることを可能にする重要な役割を果たしているのではないでしょうか。
5.今、一番興味のあるものは?
私はクライアントの為に手がけているプロジェクトに全精力を打ち込んでいます。
デザインは私のパッションであり、常にクリエイティブであり続け、夢を見続けることのできる新たな挑戦を自ら欲してやみません。
6.今後やってみたいお仕事は?
新たなテクノロジーを駆使して、人々がより幸せで快適な生活ができることを扶助するような高度で知的なものづくりができたらと思っております。

Kanji Ueki( 植木 莞爾 )Interior designer

Kanji Ueki ( 植木 莞爾 )Interior designer

東京生まれ。1968年慶応義塾大学卒業後渡伊。
リナシェンテデパート本店デザイン室、アルトヤコベル建築設計事務所勤務。
1975年帰国、1976年カザッポアンドアソシエイツ設立。

代表作
2001 APPLE STORE U.S.
2006 SHILLA HOTELリノベーション ソウル
2008 サムスン コーポレートクラブ ソウル
2012 アークヒルズ仙石山レジデンス・スパ 六本木
2014 Seoul Garden Hotel リノベーション ソウル
2014 Grand Ambassador Hotel Japanese Restaurant ソウル
2014 虎ノ門ヒルズ パブリックデザイン 虎ノ門

Tant-TantTant-Tant
1.デザイナーになろうと思われたきっかけを教えてください。
イタリアに住み始めて、1年後に縁があってミラノのリナシェンテデパートのデザイン室で働き始めました。
1年働いてデザイナーの仕事に慣れてきて、このままデザイナーになるのかなと感じました。
デザイナーになろうではなく、知らない間にデザイナーになっていました。
2.今までされたデザイン、プロジェクトで特に印象深かったものは? 
谷口吉生さんとの一連の仕事です。IBM、New YorkのMoMA、東京倶楽部などたくさん刺激と影響を受けました。
特に印象深かった仕事はスティーブ・ジョブズに頼まれた、Apple Storeの1号店をデザインした時です。
3.TANT-TANTの誕生までの経緯や特に留意した点についてお聞かせください。 
Cassina ixc.から椅子のデザインを依頼された時、カタログを見ているとレストランに使ってみようと思う椅子がなかったので、
レストランにも使用できる椅子をデザインしようと思いました。
留意した点は、イタリアの60年代のデザインが好きなので、この時代のイメージでデザインしました。
4.創造性の原点やデザイン・インスピレーションの源は何ですか? 
私の創造性の原点は今まで生きてきた記憶です。デザインのインスピレーションはそれの瞬発力です。
5.今、一番興味のあるものは?
旅行
6.今後やってみたいお仕事は?
日本で日本料理屋さんのような和風をやったことがないので、やってみたいです。