デンマーク人建築家ボーディル・ケアがカッシーナのコレクションに加わり
3つのプロダクトでリラックスしたカジュアルなダイニングを演出

空間を定義する前衛的なアプローチ

建築家、デザイナー、教授であるボーディル・ケアは、1932年にデンマークで生まれ、国際的な展望によって定義されたデンマークのミッドセンチュリーデザインにおける女性の先駆者です。彼女はアメリカで過ごした時間に大きな影響を受け、ポール・マッコブの下で短期間働いたのちボストンに移り、企業の内装建築でのキャリアを深めました。

その後、コペンハーゲン、続いてロンドンにスタジオを設立。多くの国際的なクライアントと協働し、ワークプレイスにおける革新的なアイディア、新たな手法、サスティナビリティを実装しました。この経験により、彼女は柔軟で機能的な環境の重要性を早くから理解することになりました。この概念は今日、非常に重要になっています。ボーディルは、参加、コラボレーション、使いやすさを優先するニーズに合わせて空間を形成できるよう、ユーザーが共同デザイナーのように空間の定義と計画に積極的に関与する必要がある、ということを信念としていました。

彼女は主に建築に興味を持っており、1950年代後半から1960年代初頭に、特定の必要性を解決するための建築要素として、家具をデザインしました。彼女の製品がプロジェクトに求められ、いくつかの作品が生産されたことでデザイナーとして認識されるようになりました。

今日カッシーナは、多目的でダイナミックな空間のコンセプトに最適に対応するため、1950年代と60年代にボーディル・ケアによって最初にデザインされたアームチェア、3つのネストテーブル、サービストロリーを発表します。

快適なサポート

1955年、ボーディル・ケアは、若者が仕事から家に帰った後リラックスしてテレビを見るためのハイバックチェアをデザインしました。彼女は、人間工学に関するスウェーデンの研究に基づき、不自然に緊張した姿勢で不快なオフィス家具で過ごした一日を補う目的で、チェアをデザインしました。当初はアームレストがなく、アームをロックせずごろりと横になるためのサポートシートとバックレストのみでした。
今日、カッシーナはこのアームチェアを蘇らせ、読書に快適な姿勢を提供するアームレスト付きの新バージョンでリラックスモードへと誘います。ハイバックチェアは、くつろぐのに最適な位置にデザインされています。無垢材のアームと脚、そして柔らかくパッディングが施されたシートとバックレストに、ポリウレタンフォームと発展途上国の水路や沿岸地域から回収された100%リサイクルPETが使用されている点が特徴です。

High Back Chair by Bodil Kjær – Cassina
Measurements: 58x90xh.105/41cm.

カジュアルダイニング

コペンハーゲンに戻ると、ボーディル・ケアは町の中心部に住み、活気のある社交生活を送り、多くのディナーパーティーを開きました。ダイニングルームがキッチンの近くになかったため、彼女はゲストにとって良いおもてなしをするのが難しいと感じていました。1963年、多くの家庭に共通するこの問題を解決するため、ダイニングルームとキッチンの間を行き来することなく食事を提供しながら興味深い議論にも積極的に参加できるよう、サービングカートをデザインしたのです。

スタイリッシュでレトロなキャスター付きサービングカートには、カトラリー、食器、鍋、フライパンを十分に収納し運ぶための様々な高さとセクションのシェルフが多数設けられています。カッシーナは、ボーディル・ケアと密接に協力し、オリジナルのプロジェクトを巧みに再現し、オプションでワイングラスを吊り下げるコンパートメントと、ボトルとグラスを収納するステンレスコンテナを導入することで、今日のニーズに応えるようにアップデートしました。
トロリーは、動かしているときにものが動き回ったり落下したりしないよう、エッジを立てた無垢材の構造をもち、つや消しラミネートステンレススティールトップとカラフルなラミネートパーティションが作品に新しい現代的な雰囲気を与えています。

Serving Cart by Bodil Kjær - Cassina
Measurements: 82x55xh.69/81cm.

機能サポート

ボーディルは、人々の習慣がどのように変化しているかを理解していました。食事はダイニングルームを超えてテレビの前やテラスで、よりカジュアルな方法で提供されるようになり、特に都市部では住宅がどんどん小さくなっています。
華奢でぐらついたサイドテーブルにうんざりしていたボーディルは、多目的のネストテーブルと、同年にデザインされたユーティリティトロリーを組み合わせました。3つのテーブルは見るからにモダンなキューブ構造で、上から積み重ねることができ、スペースをほとんどとらず、更なる安定性を保証します。今日でもネストテーブルは用途が広く、スナックや軽食を提供するのに最適です。細くて丈夫な無垢材の構造で、様々な色のガラス、サドルレザー、ラミネートトップと組み合わせることができます。

Nest of Tables by Bodil Kjær - Cassina
Measurements: 52x52xh.45cm; 47x47xh.42cm; 42x42xh.39cm.

Bodil Kjær

教授、建築家MAA(デンマークの学術建築家協会会員)であるボーディル・ケアは、1932年にデンマークで生まれました。デンマーク、イギリス、アメリカで教育を受け、コペンハーゲンとロンドンに自身のオフィスを開設し、建築家、デザイナー、プランナーとして実践を積みました。
ワシントンD.C.郊外にあるメリーランド大学の終身教授になる前は、エンジニア、社会学者、組織プランナーのチームで長年働き、工場、オフィス、大学の従業員のために健康的で柔軟な職場環境を作り上げました。彼女はユーザーがプランニングプロセスに関与することに重点を置いていることでよく知られており、ロンドンのArup社でオックスフォード大学やケンブリッジ大学、ペンギンブックス、イギリスのIBM、そしてアルファロメオ、ランクゼロックス、ロンバルディア地方政府などで実践しました。
ボーディルはデンマークとイギリスの建築学生に対し彼女の仕事について講義したほか、アメリカの建築学校にも客員教授として招かれ、最終的にはフルタイムで教鞭をとり、建築の問題の研究に没頭しました。そのうちのいくつかは後にケンブリッジ、パリ、ロンドン、ワシントン、ボストンで出版されました。
そのずっと前の1955年から1963年の間に、彼女は公共のインテリアをデザインする際、機能と美しさの両立の問題を解決するため一連の建築要素を開発しました。これらの家具、照明、グラスは量産用にデザインされたものではありませんが、他の建築家たちがそれらを発見して彼らの建物に使用したいと望んだため、アメリカとヨーロッパで生産、販売されました。初期の段階で建築家のホセ・ルイ・セルトやポール・ルドルフといったハーバード大学とイェール大学の建築学校の長が彼女のデザインを知り、彼らがデザインしている建物のためにそれらを求めました。シカゴのハリー・ウィーズとニューヨークのマルセル・ブロイヤーもそれらをスペックしたいと望みました。それによって、最初はアメリカのボストンにあるC.I.で製造がスタート。その後デンマークのDenbo, E. Pedersen & Son、Torben Ørskov、スウェーデンのGullaskruf、ドイツのForm im Raumで製造されました。
これらの作品のいくつかは、主にオークションで入手可能なものもあり、今日Karakterによって製造されているOFFICE DESKは、初期のボンド映画3作や最近のイギリス映画、テレビシリーズでも見ることができます。
ボーディル・ケアは現在デンマークに戻り、ユトランド半島の東海岸に住んでおり、オーフス市の開発に指導や研究を行いながら参加し続けています。

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