- ベリーニは若い時からカッシーナとの協業を始めています。 チェーザレ・カッシーナと最初に出会った際には、自身が初めてコンパッソ・ドーロを受賞した作品であるテーブルのプレゼンテーションを行い、以後現在に至るまで両者は固い絆で結ばれ様々な革新的プロジェクトを生み出しています。60年代、70年代にマリオ・ベリーニとカッシーナとの間で行われた様々な実験的なプロジェクトはその後オリジナリティー溢れる最先端デザインの創出へとつながっていきました。新素材の応用や構造上の技術革新により生み出されたのが“TENERIDE”のプロトタイプや“BREAK”チェアなどの画期的なプロダクトです。
- テキスタイルの応用“932”
「“932”の布張のシステム家具は1967年に私がカッシーナの為に手がけた最初のプロジェクトです。組み合わせたり、バラしたりすることが可能なこのシステム家具は、それまでにない革新的なアプローチのアイテムであったと思われます。恐らく“932”のテキスタイルベッドはイタリアの家具史上初の布張りベッドだったのではないでしょうか。“932”の開発には多くの痛みを伴いましたが、カッシーナ社の持てるあらゆる技術力とリソースを出し切った作品であったと自負しています。当時としては急進的過ぎるというレッテルを貼られましたが、それゆえに現代においても何ら遜色なくマーケティングできるのではないでしょうか。」
- 技術と革新“TENERIDE” 「ある時、バイエル社が開発した最新テクノロジーで、発泡した際に自ら皮膜を張るポリウレタンがあると聞きました。それを元に非常に薄いスパイラル状のスチールの芯で強度を確保したゴム状のジョイントを考案しました。ただ、あまりに斬新なテクノロジーであった為、実験的プロトタイプの作成よりも更に先までプロジェクトを進めることができなくなってしまいました。オフィス家具を手がけておらず、そのような市場を持たないカッシーナの方向性と乖離しすぎてしまっていたのがその理由でした。」
- カッシーナの新しい空間“初のショールーム”1968年に、カッシーナは初のショールームをミラノのヴィア・ドゥリーニにオープンしました。革新的であると賞賛されたデザインは、マリオ・ベリーニによるものでした。「私はスリーヴのように2重になったダブルウォールに半透明の布のライニングを施し、ギャラリーのような空間を作りあげました。中に家具を配置し、その後ろにプロジェクターで強い光を当てると家具が完璧な影絵のように浮かびあがりました。こうしてル・コルビュジエの家具をシンボリックに際立たせることができたのです。」
- コンセプトカー“Kar-a-Sutra”
“Kar-a-Sutra”(カーラ・スートラ)は工業デザインを車に応用するというコンセプトでした。このコンセプトカーは、1972年にNY の近代美術館が“イタリアンデザインに捧げる”とした一大展覧会「イタリア・新しい国内のランドスケープ展」に出品されました。斬新なコンセプトは自動車業界に大きな影響を与え、その後登場したモダンなミニバンやファミリーカーの先駆けとなりました。
- 誘惑
「このプロジェクトを遂行する上で私が思い描いていたものは、形を成さないほど不確かで、複雑で、いわば「誘惑」に駆られたインスピレーションを形にするという、カッシーナの研究開発センターにとっても極めて難解なテーマでありました。ある日フランチェスコ・ビンファレが私のオフィスに椅子を作る為に必要な材料を持ち込んで来たので、木の枝と羽根で形を作り始め、そこから何ヶ月にも渡りカッシーナでの試行錯誤が繰り返されたのです。パディングがなく、布をまとってはいても布張りのされていない、まるで亡霊のように、存在しない椅子の形を無作為に作っているようなものでした。やがて、パディングはなくともキャンバス地に詰められたガチョウの羽根の不均等な塑性により形が作られ、通常の固定型の構造ではなく四本の木製の支柱が互いにゴム製のテンションの張力により支えられている構造の椅子を作り上げることができました。」
- 家具を記号化する 「デザインは死んだ:その葬儀は1972年にニューヨークの近代美術館で開催された“イタリア・新しい国内ランドスケープ展”で営まれた。椅子は薪にくべられ、スタイルやデザインは女性誌のコラムやモダンなキッチン家具を売っている店の看板になった。」と同展の開催を主導した一人であるマリオ・ベリーニは語っています。そもそもベリーニは、「Il Libro dell’Arredeamento(家具の本)」を編纂しデザインすることを意図していました。新しい家具・室内装飾の一般的な書籍を書くことにより、カッシーナの製品を紐解いていったのです。同書でベリーニは、家具の根本的な機能を明確にしつつ、家具の様式が、伝統的な形やフォルムから逸脱することなく機能性や素材・仕上げによりいかに多様になり得るかを示しました。
-
身体を装う
ベリーニの代表作の一つであり、カッシーナのコレクションにおいてもいまだベストセラーであるCABチェアは、1977年にデザインされました。人間の身体との関係性が何よりも優先されるアイテムとして、椅子は我々の共通認識の中に最も深く定着している家具の一つである、とベリーニは言います。つまり、CABは身体の延長として考えられたのです。レザーの張地がまるで手袋のように椅子のメタルフレームにフィットし、脚部に沿って走るジッパーが輪郭を際立たせています。
「椅子のあるべき形であり、今までもそのように作られてきた、背・座・4本脚のシンプルな構造の椅子(私はCABがそれだと信じている)をデザインする勇気を得るのに、およそ20年を要してしまいました。」とマリオ・ベリーニは記しています。
「1脚の椅子からホームコレクションを作り上げることはできるのか? 私が1977年にデザインしたCABチェアは、現在発売から38年経ちますが、全世界のダイニングテーブルに合わせて100万台近くが供給されています。そしてこのたび、ベッドやラウンジチェア、オットマンを新たに加えることによりホームコレクションを展開する運びとなりました。メタルのマネキンがテーラーメイドの厚革をまといつつ、軽くて、ミニマルで、透明な世界を織り成す。ワールドワイドなCABから、CABワールドへ。」
-
CABチェアのコンセプトが、アームチェアに応用されました。まるでテーラードスーツのようにメタルフレームがサドルレザーをまとい、構造的にも実質的にもしなやかな身体の形状を完璧にサポートしています。アームチェアの内側に添えられたソフトレザークッションの効果もあり、CABラウンジは人間工学的にも驚くべき快適性を保証します。
>> 商品詳細
-
CABナイトは、高品質な素材とディテールへのこだわりをベッドルームにもたらします。構造とベッドの脚部は、他のCABファミリーと同様サドルレザーが張り込まれ、特にパーツのジョイント部分には卓越したクラフツマンシップが発揮されている様子を見て取れます。ヘッドボードには稀少なソフトレザーが張り込まれており、身体を預けた時の幸福感を際立たせています。
>> 商品詳細