MASTERPIECE IN DAILY LIFE

1927年にイタリアで創業し、モダンデザインの代名詞となる家具を数多く創造してきたカッシーナ。
中でも往年の巨匠たちによる歴史的名作を集めたのが「イ・マエストリ・コレクション」です。
時代を超えて愛されるデザインは、その背景に豊かな思想や物語があります。
日常の空間にあることでいっそう輝きを増す、そんなマスターピースをご紹介します。

vol.7836 TRE PEZZIトレ ペッツィ アームチェア
DESIGN : FRANCO ALBINI with FRANCA HELG

836 TRE PEZZI トレ ペッツィ アームチェア

合理主義者の思想を伝える家具。

20世紀半ば、モダンデザインが黄金期を迎えつつあるイタリアでは、家具のデザインにもいくつかの流れがあった。経済復興によって生まれた新興富裕層向けのものから、戦後の民主主義思想を反映した低価格志向のものまで、デザイナーたちは多様なアプローチで新しいものづくりに励んだ。そんな中で、機能に即した合理的なデザインをきわめたのがフランコ・アルビニだった。イタリアのデザインが、しばしば貴族的な装飾芸術に通じてきたのに対し、彼の作風は故郷のブリアンツァ地方の田園の風景、伝統、農民や地方文化からの学びと関連づけられる。

FRANCO ALBINI フランコ・アルビニ

アルビニは1905年に生まれ、ミラノ工科大学卒業後にジオ・ポンティの建築事務所を経て独立。1952 年以降は、女性建築家のフランカ・ヘルグと協働して多くの建築やデザインを手がけた。この時代の代表作「トレ ペッツィ」は、ラウンジチェアに求められる機能から、彼らしい視点で独特のスタイルを導き出した一脚だ。トレ ペッツィとは3つのパーツという意味で、ヘッドレスト、背もたれ兼アーム、座面の3要素を指す。身体を支える面を3分割し、それぞれが適切なフォルムとサイズで構成された。全体を支えるフレームもまた、理にかなった無駄のない形。発想の出発点は素朴でも、完成されたデザインはすみずみまで洗練され、ピュアな美しさと快適さをそなえる。台数限定で登場したシートをモンゴルヤギの毛皮で覆ったタイプもまた、素材の持ち味をストレートに生かしている。

836 TRE PEZZI
836 TRE PEZZI
836 TRE PEZZI WOOL
836 TRE PEZZI WOOL
836 TRE PEZZI WOOL

サイドテーブル「チッコニーニョ」は、3本という最低限の脚が天板を安定させ、そのうちの1本を高く伸ばすことで持ち運ぶ際のハンドルにしたもの。磨き抜かれた構造とその軽さが、ポータブルなテーブルの新しい原型を実現した。また本棚「ヴェリエロ」は、V字型の支柱をワイヤーによって安定させる仕組みに驚かされる。アルビニの創造性には、建築家、デザイナー、エンジニア、そして職人としての能力が一体になっていた。合理主義や機能主義は、彼にとってそれらの職種を越えた境地だったのだろう。

834 CICOGNINO
834 CICOGNINO
838 VELIERO
838 VELIERO

イタリアがさらに豊かになる60年代以降、アルビニは徐々に家具をデザインしなくなり、建築などの総合的なプロジェクトに専念していった。社会や産業が変化する中、単独のプロダクトをデザインすることが、製造と消費の関係に支配されてしまったのがその理由だったと考えられている。イタリアデザインの黄金期の礎には、それほど真摯な合理主義者の精神があった。彼の残した家具は、そのフィロソフィを現代へ継承するものだ。

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