Re-Frontiering 2014 Exhibition

MAIL MAGAZINE

ABOUT CASSINA SIMON VOL 1. HISTORY

シモンは、ディノ・ガヴィーナとマリア・シモンチーニによって、建築やモダンアートで影響力のあるデザイナーたちと共に、偉大なるイタリアンデザインの伝統を更に進化させるべく1968年に設立されました。シモンコレクションの持つ文化的素養や製造ノウハウにより、シモンは次第にデザインを愛する者たちにとって時代の最先端を担う定番のコンテンポラリーコレクションとなっていきました。家具のデザインが、文化的側面を促進する手段になったと言えます。シモンから誕生した作品は、品質、完成度、調和、詩情、皮肉の要素を特徴とし、デザインと製造技術の最高水準を示しています。そしてこの伝統は、カッシーナというもう一つの歴史的会社によって引き継がれました。

カッシーナがシモンをポートフォリオに加えたことは、イタリアンデザインの歴史に貢献してきた二つの重要なブランドが一つになったことを意味します。カッシーナは、1927年の創業当時から創意工夫、素材、クラフツマンシップを追求してきました。一方シモンは、1968年に設立され、合理主義の限界を極めることを目的とし、Ultrarazionaleコレクションで偉大な伝統的価値とのつながりを取り戻し、Ultramobileコレクションで芸術と工業生産の融合を成し遂げました。

DINO GAVINA / MARCEL BREUER / MARIA SIMONCINI 1963 DINO GAVINA / MARCEL BREUER / MARIA SIMONCINI 1963

GIO PONTI / MARCEL BREUER / DINO GAVINA GIO PONTI / MARCEL BREUER / DINO GAVINA

二つのブランドの創設者は、ディノ・ガヴィーナとチェーザレ・カッシーナです。親交を深めた1950~1960年代、二人はイタリアンファニチャーの急速な世界的発展に大きく貢献しました。彼らは独創的な方向性を目指すデザインの将来について長く議論を戦わせ、ガヴィーナは家具全般を、カッシーナはソファと椅子を引き受けるということで合意しました。また、その時代には足りなかったインテリアの範囲を広げて新たな室内環境を提供するため、1962年FLOSというコンテンポラリーな照明の会社を設立。二人の素晴らしい実業家は、1960年代のイタリアンファニチャーの世界的ブームの中で消費と文化の新たな関係を築くことに尽力していました。

1962年、ガヴィーナは1920年代のマルセル・ブロイヤーデザインの家具をライセンス生産しはじめ、これが世界初の再編集アーカイブモデルとなりました。しかし、ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンが1929年にデザインした家具に関しては、その当時非常に高度な技術を要すると考えられたため生産はしませんでした。それゆえにル・コルビュジエらのデザインは、1964年、デザインの可能性を理解しその技術をもって世界的成功に導くであろうと考えられたカッシーナの手に委ねられました。

CESARE CASSINA / MARCEL BREUEUR 1964 CESARE CASSINA / MARCEL BREUEUR 1964

CESARE CASSINA / GIO PONTI 1970 CESARE CASSINA / GIO PONTI 1970

ガヴィーナこそが「デザインを再編集する」というコンセプトや、デザイン文化と家具の関係がいかに重要であるかを初めて指し示し、カッシーナが後に1970年代よりフィリッポ・アリソン教授と共同開発する、偉大な建築家たちのイ・マエストリコレクションの土台を築いたのです。

DINO GAVINA / MAN RAY / JULIETTE BROWNER 1969 DINO GAVINA / MAN RAY / JULIETTE BROWNER 1969

MAN RAY / MARCEL DUCHAMP / DINO GAVINA 1966 MAN RAY / MARCEL DUCHAMP / DINO GAVINA 1966

Dino Gavina
Dino Gavina 1922-2007
イタリア、ボローニャ生まれ。
1940年代、舞台セットの仕事でキャリアをスタートし、1960年Gavina SpAを設立。1962 年、N.Y.でマルセル・ブロイヤーに会い、彼の家具のリプロダクション権を得る。チェーザレ・カッシーナとともにFLOSを設立するなど、家具以外のインテリア設備の充実に尽力した。1968年、カルロ・スカルパやパートナーであるマリア・シモンチーニとともにSimon International を設立。合理主義の限界を打ち破ることを目的としたUltrarazionaleコレクション、家具にアートとしての機能をもたせたUltramobileコレクションなどにより、simonをデザイン界のリーディングカンパニーに押し上げた。ディノ・ガヴィーナこそが、今日「イタリアンスタイル」として知られるものの原点を生み出してきたのだ。マン・レイなど数多くの芸術家と交流をもち、デザイン、アート、我々の生活を豊かにするたくさんの詩的なものたちへの無限のエネルギーと情熱で、イタリアのみならず世界的にもデザイン界に大きな影響を及ぼした。


©2014 CASSINA IXC.

Carlo Scarpa 1906-1978
イタリア、ヴェネチア生まれ。建築家、デザイナー、アーティスト。
1926年ヴェネチア・アカデミー・オブ・アートを卒業し、プロとしてのキャリアを始めた。職人たちとの交流を続けながら、20年に渡り建築からガラス製作、デザインプロジェクトや美術館の展覧会立案まで、数多くのデザインを手がけた。長い間ディノ・ガヴィーナとともに働き、シモンの代表的な一連の家具シリーズをデザインした。

プロダクト ストーリー

DOGE ドジェ テーブル
DOGE ドジェ テーブル
1968年simonで最初に製作された、大きなガラス天板とスチールベースのテーブル。「DOGE」とはイタリア語で国家元首を指す言葉であり、威風堂々たる雰囲気を醸し出しています。
オリジナルデザインは1964年~1967年にカルロ・スカルパが設計したスイスのツェントナー邸の為のものですが、当初天板は不透明な素材を用いていました。
天板を支えるフレームの構造が見事であるにも関わらず、その視界を遮ってしまう仕上げを創業者であるディノ・ガヴィーナが酷評しました。カルロ・スカルパがその助言を受け入れて現在のガラス天板の 仕様となったのです。
ネジ一つに至るまで細やかな意匠表現が施されるなど素材とディテールにこだわったスカルパらしいデザインとなっており、スカルパの建築の代表作の一つであるヴェネチアのクエリーニ・スタンパリア財団の入口の橋に、このテーブルと似た意匠が見られます。
SARPI サルピ テーブル
ガリレオに「ヨーロッパ随一の博識である」と言わしめた、ヴェネチア出身の学者パオロ・サルピの名が由来です。
DOGEテーブルの成功を受け1974年にコレクションに追加されました。素材使いやディテールは同じですが、逆さにしたようなフレームが目を引くデザインです。
オリジナルデザインはオクタゴン(八角形)の天板で、息子のトビア・スカルパがベルヌーイの螺旋に習ってエリステラ(オーバル)をデザインしました。
SARPI サルピ テーブル


©2014 CASSINA IXC.

Meret Oppenheim 1913-1985
ドイツ、シャルロッテンブルグ生まれ。
自由で本能的な創造性に満ち溢れ、様々な芸術的テクニックを応用する多才な芸術家。
1932年パリに移り住み、マン・レイやデュシャンらシュールレアリズムの巨匠達と交わり、
ことマックス・エルンストとはパートナーとして親密な関係を築く。代表作には、毛皮で覆われたコーヒーカップ「朝食」や、
「imaginary furnitureexhibition(創造的家具展)」の際に発表した鳥の脚のテーブルがある。

プロダクト ストーリー

TRACCIA トラッチャ サイドテーブル
TRACCIA トラッチャ サイドテーブル
シュールレアリズムのアーティストであるメレット・オッペンハイムは、しばしばマン・レイの写真のモデルにもなっていましたが、「Le déjeuner en fourrure(1936年パリで開かれたシュールレアリスト作品展で発表した、完全に毛皮で装飾された不安定なコーヒーカップとスプーンの作品)」を若くして制作しました。
そして同じ年のもうひとつの特別な作品「TABLE WITH BIRD’ S FEET」を大量生産することについてガヴィーナと合意しました。奇妙な動物の足跡がついた金色の小さなテーブル。金属で鋳造された同じ爪脚がテーブルの脚となっています。
TRACCIAは、家の中に常識に反した詩情の存在の必要性を説くべくコレクションに追加されました。


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Man Ray 1890-1977
アメリカ出身の画家、フォトグラファー、映画製作者。
ダダイズム、シュールレアリズムを代表する芸術家であり、超現実主義者。1920~1930年代、主にフォトグラファーとしてパリで活動していた。
レイヨグラフ、ソラリゼーションなどの技法を駆使し多様な作品を残した。

プロダクト ストーリー

Les Grands Trans-Parents レ グラン トランスパラン ミラー
Les Grands Trans-Parents レ グラン トランスパラン ミラー
1938年マン・レイは小さなスケールで鏡に「Les grands trans-Parents(大きくて透明)」という言葉を洒落て描きました。
1971年、この楕円形の鏡は家の中における視覚的な詩情の不滅の存在として意図され、大量生産されました。
Le Miror "S" ル ミロワール S ミラー
マン・レイがsimonの"s" を描いたものです。
Le Miror "S" ル ミロワール S ミラー


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高濱 和秀 1930-2010
九州生まれ。東京で建築を学び、設計事務所で働き始めた。
1957年ミラノトリエンナーレの為にイタリアに渡った際、ディノ・ガヴィーナと出会い、その後活動の場をイタリアに移した。
シモンにも数々の名作コレクションを残している。彼のデザインする家具は厳格さと美しいラインが際立っており、
生まれ育った極東の文化と交流を深めた西洋の文化が融合して彼独自の表現が本質的に表れている。ボローニャにて没。

プロダクト ストーリー

TULU LG ツル エルジー スタッキングチェア
TULU LG ツル エルジー スタッキングチェア
60年代はプラスチックやポリウレタンなどの新素材を使ったポップなデザインが数多く発表されており、そのような背景の中で1968年に誕生した、スチールロッドを使用した最初の製品です。
フレームにエラストベルトを張り、取り外しが可能なカバーリング構造というシンプルなデザインは、その後の同タイプのチェアのベンチマークとなっていきました。
高濱和秀のデザインは、全般的なデザインとの調和を意識していました。そのためDOGEと同時期にデザインされたTULUは、カルロ・スカルパがDOGE の為のチェアにも選んでいます。
ディノ・ガヴィーナも、「TULUは戦後の全産業デザインにおいて最も均整のとれたチェアである」と言っています。
GAJA/GAJA BAR ガヤ/ガヤ バー チェア/カウンターチェア
TULUと同様の構造のチェアです。当初小さなレストランのためにデザインされ、その成功を受けてコレクションに追加されました。
スタッキング姿も絵になります。
GAJA/GAJA BAR ガヤ/ガヤ バー チェア/カウンターチェア
DJUNA ジューナ サイドテーブル
DJUNA ジューナ サイドテーブル
20世紀のアメリカを代表するモダニスト作家ジューナ・バーンズの著書に捧げるデザインです。
MARCEL T マルセルT ネストテーブル
3サイズが1セットになったネストテーブルです。スティールロッドとMDFラッカー塗装仕上げの組み合わせは、simonコレクションとデザイナー高濱和秀の特徴がよく表れています。
simonは日本の漆塗りの技術を初めて工業化させ家具の生産に用いたメーカーです。
日本を訪れたディノ・ガヴィーナが伝統的な漆塗りに感銘を受け、ミラノトリエンナーレで出会った高濱和秀とともにその技術を今日のラッカー塗装へと発展させました。
MARCEL T マルセルT ネストテーブル


©2014 CASSINA IXC.