Historical Events

Salon d’Automne Paris 1929 1929年パリ、サロン・ドートンヌ

ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンにより1929年にサロン・ドートンヌで発表された「住宅のインテリア設備」は建築物の内装や内的空間を考える、大きな概念の変化の中心をなすこととなりました。この発表以降、建物や住空間の環境を見直す動きが起き、モジュラー型家具やカジエ・スタンダールに見られる棚、壁面家具や間仕切りの機能を持つ家具などが扶助的な存在として注目されます。さらに、新しい機能と形・デザインを持った自立型の家具が住空間の主導的な位置を占めるようになりました。

Salon d’Automne Paris 1929

LE MODULOR 1943 1943年 モデュロール

「これは比例に関する言語で、悪を複雑にし、善を簡単ならしめる」
アルバート・アインシュタイン

ル・コルビュジエは、工業生産の世界を支配し、混沌とし統制の取れないシステムに終わりを告げるべく、モデュロールを新たな尺度として提案しました。

モデュロール人体寸法を黄金比率とフィボナッチ数例により算出し、美しい建築物を生み出すための一つの手段としたのです。緻密でありながら、誰もが納得するスケール。古来より伝わる美。統制が取れ、存在する様々なパーツをつなぎ合わせ数学的な言語を用いつつ普遍的なバランスを持ち続ける原理をモデュロールは体現しています。

ル・コルビュジエ、アルバート・アインシュタイン

CABANON 1952 1952年 キャバノン(休暇小屋)

合理的で素朴でありながら、真の意味で豊か(贅沢)であり統制の取れた構造のこの建物は、人が住まう場所としての独創的かつ究極的なソリューションであるといえます。キャバノン(休暇小屋)は「強いインパクトを与える」あるいは「見せる」などといった価値を排除し「どのようなクオリティー(質)を選択するか」を第一の問題として提起しています。壮大あるいは雄弁であっても、控えめかつベーシックであっても、建築物はそこに住まう人間がぬくもりと情熱を吹き込むことにより初めて本来の機能を満たし価値を持ちます。キャバノンはそこに住むことを決心した建築家自身により構想、デザインされ建てられたものであり、建築設計の理想的な条件を満たしているといえましょう。コンセプトと完成形の統合がされつつも、「自身を投影するような家」を建築家に託したクライアント(ル・コルビュジエ)と、そのクライアントの意向と抗う呪縛を受けた建築家(ル・コルビュジエ)のアンチテーゼが織り込まれているのがキャバノンです。キャバノンを復刻再建しようという試みは、展覧会の巡回展示の為のみならず、デザイナーとクライアントとの間の責任の所在や関係性をより顕在化させ、本質的な価値や感受性を発見し、比類なきインスピレーションの源となった巨匠のタッチと洞察力、さらには内装を現代によみがえらせることにありました。

1952年 キャバノン(休暇小屋)

CABANON 2006 2006年 キャバノン(休暇小屋)レプリカ

1952年に素朴な木で建てられ、自らを主張をすることなく地中海の風景に自然に溶け込んでいるキャバノン(休暇小屋)は、ル・コルビュジエの建築の粋が集約された貴重な作品といえます。建築構造上のメリットを最小限に抑えた簡素な内装。かねてより、現代文化に大いなる足跡を残した偉大な建築家たちの哲学的価値を広く世に知らしめることをミッションとして来たカッシーナ社が2006年に立ち上げたプログラムが「キャバノン2006」です。カッシーナはル・コルビュジエの没後40年に渡り正当な理由もなく看過され、埋もれていた作品を綿密に調べ上げ、内装の微細までをも研究しつくしキャバノンを再現しました。キャバノンの復刻は何年にも渡り巨匠の家具を復刻してきた経験と技に裏打ちされ、建物を復刻するためのデザインリサーチのあり方にも大きな影響を与えました。ル・コルビュジエ財団とカッシーナの協力のもと再建されたキャバノンの復刻は世界各地で行なわれている様々なル・コルビュジエの展覧会の際に展示されています。

2006年 キャバノン(休暇小屋)レプリカ
01. Équipement d’intérieur d’une Habitation, 1929. © FLC/ADAGP 02. Équipement d’intérieur d’une Habitation, 1929. © FLC/ADAGP
03. Le Modulor, Le Corbusier © FLC/ADAGP 04. Le Corbusier and Albert Einstein, Princenton, New Jersey, 1946. © FLC/ADAGP
05. Le Corbusier inside the Cabanon, Roquebrune Cap-Martin. © FLC/ADAGP
06. Interior of the Cabanon, Le Corbusier, 1952. © Ph.Lucien Hervé/ FLC/ ADAGP
07. Sketches by Le Corbusier, Carnet 22. © FLC/ADAGP 08-10. La mer, Le Corbusier 1952/56. © FLC/ADAGP